2008年5月31日 (土)

国家資格化の動向

久しぶりに、国家資格化関係のことを書きます。

臨床心理職の国家資格化の進み具合ですが、基本的には、2005年7月時点と同じ構造の中で、どの方向に道を開いていくか、それぞれの団体が検討と模索を重ねている状況です。それに加えて、この1年ぐらいで出て来た「日本学術会議」の新たな動きがあります。この動向にみなさんも注目していただきたいと思っています。

2資格1法案ショックから、すでに3年が経過しつつありますが、組織が動くということはこのぐらい時間がかかることのようです。会議ひとつするにも、「月」単位での時間が必要だということが、私にもよくわかって来ました。日程調整、会議、議事録の作成という手続きで、正式な大きい会議は3か月ぐらいはすぐかかってしまうのです。特に、たくさんの団体が参加している会議だと、いっそう時間はかかるのですね。

2005年7月体制というのは、すごくくどいようですが、全心協という団体が中心になって進めた「医療心理師」の流れと、(現に存在する)認定臨床心理士関連諸団体が中心になって進めた「臨床心理士」(注:国家資格の名前にもこの名称を使うという提案は、議員連盟からのものです。)の流れという、2つの流れが別々にあったものを、2005年7月に、2つの議員連盟が一緒になって「臨床心理士および医療心理師法案」という法案にまとめたが、まとまった法案に対して、日本精神神経科診療所協会日本精神科病院協会をはじめとする精神科医療諸団体の強い反対が起きたために、その先がなかなか進まない状況のことです。

医療心理師推進と、臨床心理士推進との双方に、それぞれの関係団体が集まる推進協議会と、それに対応する議員連盟があります。議員連盟はどちらもなくなったわけではありません。関係諸団体の意向がまとまりさえすれば、すぐにでも法案を国会上程する体制で、議員連盟は待機している状況と言えます。関係諸団体の意見調整は、議員の方々にやってもらえるようなことではなく(国会議員がいかに忙しいかということです。)、要望の当事者が奮闘すべきことということになるようです。

それで、大きい動きが見えて来ているわけではありませんが、関係諸団体がそれぞれに、いろいろと調査したり話し合ったりして、おおかたの流れとしては、すでに作成されているこの「臨床心理士および医療心理師法案」を生かす形で進めようという考え方が現実的なのではないかという方向性が、少しずつ前に出て来てはいます。

この法案の問題点は、いろいろ指摘されていて、特に、医療心理師と臨床心理士が両方働くことになる医療領域から、「混乱する」という意見が出ていることが大きな問題だと思われます。精神科医療諸団体のその後の意見の変化などは聞こえて来ません。

そんな中、今日は、精神神経学会総会で「心理技術職」のことが取り上げられているようです。私は参加できませんが、どなたか参加された方、内容を教えてもらえるとありがたいです。

そして、この2つの流れに加えて、日本学術会議の心理学・教育学委員会心理学教育プログラム検討分科会と心理学・教育学委員会健康・医療と心理学分科会、この4月に発表した対外報告「学士課程における心理学教育の向上とキャリアパス確立に向けて」に現れている、新しい流れがあります。(上記の学術会議のホームページに入って、目次欄の「審議活動」内の「勧告・声明・提言・報告」をクリック→「対外報告の一覧を表示する」をクリック→2008-4-7の、「学士課程における…」の欄をクリックで読めます。pdfです。)

これを読みますと、日本学術会議では、学部レベルでの心理学教育を体系化し、心理学を応用する職業に必要な学部心理学教育を修めたことを保証するものとして、「職能心理士」という国家資格化の創設を推進しようということのようです。

日本学術会議の考え方でいきますと、「心理学」全体の学部レベルでの資格を作る必要性があるということですね。臨床心理士の資格は、修士課程の教育レベルを保証する資格、医療心理師の資格は、医療制度内でチーム医療への位置づけを保証する資格ということです。それぞれに性質が異なっています。

・・・・・

ほんとうにややこしいことです。3つ別々の資格を作ることが可能なのか、それとも、3つの別々の流れの中で、何らかの政治的動きで先にできたものが国家資格となるのか、それとも、何らかの形で統合が可能なのか、どの道を取るにしても、関係者が本当に苦しんで話し合いをしていかないと前に進めないように思います。

国家資格は何のために必要なのか。あるいは、必要でないのか。

心理学や臨床心理学を通して人々の役に立つという仕事を、どのような形でこの国に普及するのか、その質をどう保証するのか、3つの流れの複雑さに混乱することなく、関係する人全体で、もう一度考えていかなくてはならないと思います。

2008年5月23日 (金)

臨床心理学への期待

私は、このところ、精神科医師が中心に心理職も参加している小さな研究会に月一回参加しているのですが、そこで出ていた話です。

DSM-Ⅲ以来の操作的診断の流行やさまざまな社会経済状況の影響で、最近の精神科では、じっくりと患者さん一人一人を理解していくような診察がしにくい現状がある。共通言語としてのカテゴリー的診断が必要である一方で、症状にはその個人の歴史の中での意味がそれぞれにある。個別の患者さんの生育歴や生活状況の全体の流れの中でどのように症状が現れてきたかを見ていくことなしに、患者さんという人間がわかるということは難しい…というような話題がありました。

精神科医師が、そういうゆったりした仕事がしにくい背景としては、何よりも「多忙」であることがあがっていました。そして、臨床心理学には、そのような個別の歴史と生活の全体からその人を理解する仕事を担っていってほしいというような話になっていました。

日本の臨床心理学は、そういう個別性、人間全体ということを大事にしてやって来ていると思うのですが、尊敬する精神科医師の方々からそういう話を聞けてとても勇気づけられました。

私は、科学やエビデンスということも大事だと思っていますが、同時に、歴史的全体的に人が人に関わっていくという態度が、援助する仕事の基本ではないかと思います。これは、左手と右手のように、両方で仕事をするということではないかと思います。

また、科学やエビデンスということが、実はいろいろと経済社会的な流れの中で作り出されたものでもありうるということに注意深くありたいと思います。

認知行動療法でも良い実践は、共感やその人全体への配慮、共同作業という人間的交流ということを、ちゃんとやっているように感じます。力動的な心理療法と言っても、形式がそうであるだけで、操作的機械的で押しつけがましく害になるような実践もあるかもしれません。

人間が人間を大事にすることという基本の上に、エビデンスや科学の成果を有意義に使えるようでありたい、その知恵は現場からしか生まれないと改めて思いました。

精神療法を大切にされてきた精神科医師の言葉の重みを感じつつ…

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2008年5月13日 (火)

どなたか参加できる方は?(精神保健関連)

地域精神保健の関係で、いくつか気になる学会やセミナーがあるのですが、東京開催のものが多く、私は資金繰りや体力面から参加できそうになく、残念に思っています。

どなたか参加できる方があれば、参加していただいて、内容を教えていただければ嬉しいです。

ひとつは、メンタルケア協議会のシンポジウムです。(メンタルケア協議会のホームページ

第12回シンポジウムということで、「精神障害者の家族支援とEarly Interventionを考える」と題し、英国からSmith博士という方が招かれるようです。ご存じのように、英国では、臨床心理士が地域の中で精神障害者への援助者として活躍しているそうです。どんなお話が聞けるか楽しみですね。

もうひとつは、日本精神神経学会の学術総会です。(日本精神神経学会のホームページ)(第104回学術総会のホームページ

こちらは、今月末5月29日から31日の開催とのことですが、その中の5月31日の一般演題に心理職のことが取り上げられます。

「一般演題(口演)心理技術職」座長鈴木二郎

  1. 柏崎厚生病院における心理技術職の活動(松田ひろし他)
  2. 医療現場が心理技術員に望む資質(西松能子)
  3. 医学医療領域における心理技術職の労働実態(大下隆司他)
  4. 心理技術職の国家資格化に関する論点と課題(佐藤忠彦他)

座長の鈴木二郎先生は、国家資格化の厚生労働省の検討委員会の座長だった方ですね。精神神経学会でもこのような検討がなされているということで、どんな話か大変気になります。

2008年4月23日 (水)

成人の自閉症スペクトラム診断

このところ、精神科の医療機関で、「私はアスペルガー症候群ではないでしょうか」と診断を求めて訪れる成人の方々が増えている傾向があるという話を聞きます。

自閉症スペクトラムの診断やアセスメントには、自閉症スペクトラムの方々との仕事の経験を積んだ専門家が必要だと言われます。成人ともなると、発達歴の収集も難しくなるでしょうし、さまざまな二次障害やパーソナリティ障害との関連も考慮する必要があるでしょう。

よこはま発達クリニックでは、第3回の成人の自閉症スペクトラム診断のセミナーが7月13日にあるそうです。自閉症スペクトラムの臨床に携わっている方なら、心理職も参加可と聞きました。詳しいことはこちらを→

成人の自閉症スペクトラム診断(第3回)@よこはま発達クリニック

昨年暮れに、内山登紀夫先生の心理アセスメントについての講義を聴く機会がありましたが、いかに自閉症スペクトラムの方々を支援するかという目的のための丁寧な工夫にあふれたお話で、大変感銘を受けました。3回目ということで、申し込みのチャンスかもと思いましたので、記事にしました。興味のあるかたは上記ホームページを読んでみてください。

2008年4月13日 (日)

5月3日に会議を企画

みなさん

なかなかブログが更新できず、ご心配をおかけしております。何とか元気でやっています。いろいろとご支援ありがとうございます。新年度に入ってまたぼちぼち書いていきたいと思います。

さて、早速ですが、こんどの5月3日(祝)に大阪で会合を企画しております。

これは、精神医療保健福祉領域の心理職の人たちが中心になって、国家資格化のことや診療報酬のことを含めて、従来の臨床心理職職能団体の枠組みを超えた新しい動きを作ろうという有志による話し合いです。

具体的には、新しい研修会のあり方や、各臨床心理職職能団体向けの提言などを検討したいと思っています。

会合の場所は、クレオ大阪中央の第一会議室で、時間は午後1時から5時までです。当日参加も歓迎しますが、詳細を知りたい方や予約参加していただける方は、今井たよか:caw64540@pop21.odn.ne.jp(スパムメール対策のため@は全角文字になっていますので、半角に直して送信してください)までメールください。

よろしくお願いします。質問はこの記事のコメント欄に書いてくださっても結構です。

2008年3月 4日 (火)

こころの健康疫学調査

京都新聞(滋賀版)の3月4日朝刊7面に「危うい日本人のメンタルヘルス  4人に1人精神障害体験」と題して、厚生労働省のこころの健康科学研究事業「こころの健康疫学調査」のことが掲載されていました。リード文をちょこっと引用しますと…

 うつ病や不安性障害、アルコール乱用・依存症などの精神障害は住民の四人に一人がこれまでの生涯で、十人に一人が一年間に経験しながら、受診・相談した人は三割にとどまっていた。

インターネットで調べたところ、この報告書が読めるのは、NPO法人全国引きこもりKHJ親の会のホームページでした。このホームページの「ご案内」のところにある、「厚生労働省こころの健康科学研究事業委託研究:心の健康「ひきこもり」の疫学調査の最新版(3カ年計画のH19年度報告)」(pdfファイル)をクリックしていただくと読めます。元ファイルの題名は「こころの健康についての疫学調査に関する研究」です。

欧米の臨床心理学の教科書を見ると、疫学的な解説から始められているものに出会うのですが、日本の臨床心理学の教科書では疫学が大きく取り上げられているものに出会うことが不勉強なせいかなかったので、こういう大規模調査は参考になりそうです。

私は、特に、この報告書の図表データに、何らかの精神障害に罹った人が、心理職など医師以外の専門家に相談に行った件数もあげられていることが参考になりました。ざっと見たところ、精神科医の門戸を叩く人数の4割程度にあたる人数が、「その他の専門家」の門戸を叩いているようです。薬物療法の必要な人々の3割強の人数が、最初に医療機関以外を訪れているということでしょうか。

精神科医と心理職は(お互い批判すべきところはしながら)仲良くやっていかないと人々の利益にならない!と、改めて感じさせられるデータでした。

2008年2月27日 (水)

次年度の研修会のこと

以前から書いているように、私は、全心協の関西地区研修会というものを長い間末席でお手伝いしていて、それが縁でこの2年ほど国家資格化のことでいろいろと手伝う機会が増えて来ました。その全心協関西地区研修会も、今年度をもっていったん幕を閉じたことは、ホームページにある通りです。

全心協では、もともと役員会主催の研修会というものはなくて、各地域で有志がやっている研修会を、協会が経済的に支援して、会員のみなさんに集まってもらっていました。(だんだん、会員のみなさんは集まりにくくなっていますが…。)

次年度以降、従来の関西地区研修会とは別の形で、研修会を企画・運営する有志が必要で、現在それを募集しているところです。

全心協の本来の目的のひとつだった、精神科関係の医療・保健・福祉におけるチーム支援の領域での心理の職能を高めることという、その趣旨に添った研修会ができるといいとは思っています。認定臨床心理士関連の研修会がたくさんあるので、それでもあえて全心協関係の研修会をするとするなら、何を目的にするかということです。私はやはりそれは、精神科臨床が軸であると思っています。それも、医療だけではなく、福祉や生活の精神科臨床です。

もし、やるなら、全心協という枠組みにとらわれず、もっといろいろな立場の人々が参加しやすいやり方ができないものかとも思っています。精神科医の方々と一緒にやれたらいいという思いもあります。

また、みなさんもご意見をお聞かせください。

2008年2月12日 (火)

スクールソーシャルワーカーのこと

次年度から2年間、文科省の事業で、スクールソーシャルワーカーが学校に派遣される件について書きます。

文科省のスクールカウンセラー活用事業は、平成7年度から始まったので、来年度で14年目を迎えることになります。残念なことに、来年度からは、文科省の補助金が3分の1に縮小されることになりました。今までは、2分の1が国の補助金で、残りを都道府県が出すという形でした。いずれの都道府県も緊縮財政の折から、2分の1補助だった時と同じだけの事業規模を都道府県で維持するのは難しく、私の所属する県では、来年度は、スクールカウンセラーの時間数が全体的に半減という状況のようです。

スクールカウンセラーの事業規模が縮小されたことは残念ですが、急速に広げすぎた感もありました。縮小という厳しい現実が、何が必要か、何が有効か示していくための、良い試練となるといいと思っています。

スクールカウンセラーは縮小されますが、文科省は、新たにスクールソーシャルワーカー活用事業を始めることになりました。次年度から2年間、全国で15億円を国が100%負担して活用調査研究の形で行われるようです。

学校にスクールソーシャルワーカーが導入されることは、大変望ましいことで、新たなステージの始まりだと感じています。ソーシャルワーカーが加わることで、学校の中で、本格的な「多職種によるチーム支援」が始まるのだと思っています。精神医療ではおなじみの多職種チーム支援が、学校の中でも本格的に稼働するということですね。

多職種チームでは、それぞれの職種の相違点と共通点を利用しながら、より多面的に効果的に支援が行われることが目標ですし、そうでなければ、導入の意味もないと思います。チームが有効に動けるために、いちばん必要なことは「チームワーク」でしょう。

私は、対人援助のチームというのは、サッカーのチームに似ていると思います。各自の役割分担や持ち場がありながら、システム的かつ自由度の高い動きで、たまにはゴールキーパーがシュートを決めることもあるというチームです。理想はそういうところにあると思っています。

現実には、「カウンセラーとソーシャルワーカーってどう違うの??」という教師のみなさんへの知識の普及から始まるので、4月からいろいろと混乱も起きそうですが、それはそれとして楽しみな春です。

2008年1月19日 (土)

厚生労働省へパブリック・コメントを

みなさま、今年もよろしくお願い申し上げます。

さて、平成20年度の診療報酬改定作業が大詰めを迎えており、現時点での骨子に対するパブリック・コメントが求められています。以下のページをごらんになってください。

この募集ページから、「平成20年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」という資料が読めます。

それを見ますと、Ⅱ-5「精神障害者の療養生活支援について」という項目があり、長期入院の防止、地域生活への移行をはかるための評価が書かれていて、それらは前向きな改定であると思われます。

問題は、Ⅱ-5-(12)です。引用しますと、

精神科外来における精神療法について患者の状態に応じて診療時間に大きな差が見られる実態に即して、時間の目安を設けるとともに、長時間にわたる場合には評価を引き上げる。また、地域で療養生活を送る精神障害者の継続的な受診機会確保のため、精神科医の訪問診療において、精神療法の算定を認める。

後段の「訪問診療における精神療法の算定」は、望ましい改定だと思われますが、前段の、「時間の目安」というところが、くせもののようです。一見すると、「長時間にわたる場合に評価が引き上げられて、報酬が上がるのではないか」と見えますが、事態はそう単純ではないようです。

この件は、昨年から少しずつインターネットでも議論されているようです。そのあたりは、はらちゃんのブログ「2008年診療報酬改定<通院精神療法>」が参考になります。

医療政策全体の流れから考えて、「どこかを増やすにはどこかを削って、全体としては抑制していく」という傾向が来年度も続くでしょう。長時間を評価するなら、短時間への報酬は下がるということになる可能性があります。

精神科のクリニック・診療所の収入は、通院精神療法の診療報酬に負うところが大きいです。精神科の中には、精神保健福祉士や心理職など、直接的に診療報酬をとりにくい職種をたくさん雇って、患者の方々に手厚い医療を提供しようと努力しているところもたくさんあります。通院精神療法への時間軸導入は、そのような手厚い医療機関に、むしろ打撃になるのではと懸念されます。

いろいろな意見があると思われますが、外来精神医療の質の確保、特に、チーム医療の確保のために何が必要か、みなさんもパブリック・コメントを送ってみてはどうでしょう。私も、今回、パブリック・コメントに初挑戦してみようと思います。締め切りは1月25日だそうです。

2007年11月27日 (火)

医行為論の難しさ

近日中と予告しながら、あっと言う間に2週間以上経ってしまいました。

私事ですが、だんだんといろいろな健診にひっかかるようになって来まして、昨日は生まれて初めて「腸カメラ」というものを受けました。(結果は異常なしでしたので、ご心配なく。)

「腸カメラ」、すなわち腸の中にファイバーを入れてあれこれするというようなことが、「医行為」=「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼす恐れのある行為」であることは、全く議論の余地のないことだと思います。

ところが、精神のこと、心理のことになって来ると、医行為の確定はそれほど簡単ではなく、そのことが臨床心理職の国家資格化の難題であることも周知の通りです。

臨床心理職の国家資格案が2つに分かれてしまったのは、心理業務に「医行為を含む」とする立場と、「医行為は含まない」とする立場とがあったからです。

心理検査、心理学的診断、心理相談、心理療法、集団へのアプローチ、地域へのアプローチといったことが、心理職の仕事であることには、異論のないところだと思います。

そして、それらの仕事が、精神科医の仕事と一定の重なりがあることも、異論のないところだと思います。

精神科医は、医学を基礎としていて、心理職は心理学・臨床心理学を基礎としているという違いがあるので、同じように心理的な見立て、心理療法を行う場合でも、観点や介入方法に違いがあることも明らかでしょう。

そして、心理職は、これらの仕事を、医療機関でも行い、その他の領域でも同じように行っているという、動かしがたい事実があります。心理職の仕事を利用している人々は、精神医療を利用している人々と重なりながらも、もっとずっと幅広いと言えます。

そして、心理的な仕事は、対話や関わりを通して行うものなので、「腸カメラ」のようには、「ここからここまでがこの行為ですよ」と明確にできないという特徴があると思います。

国家資格化において、「医行為を含む」とすれば、医療領域以外で同じ心理学的援助行為が行われていることをどうするのかという課題が生じますね。また、「医行為を含まない」とすれば、医師の仕事と重なっている部分をどうするのかという課題が生じるのだと思います。

すなわち、心理の仕事に「医行為を含む」と法律で決めてしまうと、厳密には、医療領域以外での心理の仕事もそれに縛られる懸念があります。また、心理の仕事に「医行為を含まない」と法律で決めてしまうと、精神科医の行為のうちで医行為を認められないものを作ってしまうという矛盾が生じるのではないかと思います。

それで、現状は、心理の仕事は、何も法律では規定されず、どの領域においても「自由に」やっていいわけですね。その自由度を損なうことなく、国家資格化で責任を明確にするということは、確かにとてつもなく難しいことのようではあります。

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