国家資格化への新たな動き
インターネットを細かくチェックしておられる方はすでに気づかれていると思いますが、人間性心理学会のホームページに、国家資格化の新たな動きに関する記事が掲載されています。
この動きは、臨床心理職国家資格推進連絡協議会に参加する団体には、すでに伝わっているところだと思います。この記事の最後のほうに、「日本臨床心理士会は・・・決議」とありますが、その点はまだ会員には伝達されていないので、どういう動きか気になります。
この記事を読むと、「一資格一法案」への動きが出てきているということがわかります。これは、この4年間の「二資格一法案」の苦難を乗り越える新たな方向ですね。
資格が「ひとつ」になることは、多くの人が望んで来たことだと思うので、そういう新しい方向が出てきたことは大変嬉しいです。しかし、「一資格一法案」は、どういう「ひとつ」になるのでしょうか。いろいろと考えられますが、医療心理師の案と臨床心理士の動きを合わせていく「ひとつ」ということのようです。
- 名称はどうなるの? ○○心理師とか、もっとシンプルなもの?
- 領域はどうなるの? 医療限定ではないわけですよね?
- 資格の性質はどうなるの? 名称独占ということしかないでしょうね?
- 受験資格はどうなるの? 学部卒と修士修了とを合わせるのかな???
- 医師や他の職種との関係は? 医療では医師の指示ということですね?
- 主務官庁はどうなるの? 厚生労働省と文部科学省と・・??
- 現任者はどうなるの? いわゆる移行措置?範囲はどうなるの??
- 試験はどの機関がするの? 受験資格の認定はどこがするの?
など、いろいろな疑問が湧きます。今まで数十年にわたる議論、「二資格一法案」から4年間にわたる議論がありましたので、論点は出尽くしているようではあります。具体的な内容にはまだまだ調整の必要なことがありそうですが・・・。
この動きに呼応して、次のような勉強会もありますね。
少人数の有志でしっかり議論する会にしたいそうです。国家資格のことが、政治的な力関係で決まっていくのは、ある程度しかたがないかもしれませんが、私たちの立場からは、「現場の仕事」がより良いものになるための国家資格(もし作るなら)であってほしいです。この勉強会は、「現場の実務からみた資格問題」ということにポイントがおかれるようです。新型インフルエンザも落ち着きましたので、大阪近辺の方々は参加されてはいかがでしょう。
さて、私が上にあげた8つのポイントの中で、特に気になっているのは、4の受験資格です。学部卒と修士修了を「ひとつに」合わせるということは、何らかの形で、たとえば「Ⅰ種とⅡ種」とか、「正と准」とか、「正と補」とか、そういう区別がなされる「ひとつ」になるのでしょうか。
そういうことを考えているのもあって、前回「正看護師と准看護師のことなど」という記事を書きました。以下に、この記事を少し補足します。
医療に正看護師と准看護師があるのは、単に「医師が准看護師を作って安く使いたい」という理由だけではないと思います。もう少し深く考えないと、この国の医療従事者や対人援助職の労務問題が見えて来ないのではと思います。
准看護師の廃止に慎重論をとなえている日本医師会の主張を読むと、看護職を必要な人数確保するために、どうしても准看護師という養成ルートも必要ではないかということが書いてあります。
医療というのは、「どの地域でも」「どんな経済社会状況の人でも」「必要なときにいつも」受けられるものにすることが重要です。看護職も、日本全国のどこの地域にも一定数確保される必要があるということです。近年、施設基準の関係で、正看護師は都市部の大病院に集中しており、地方の小さい医療機関では正看護師の確保が困難だそうです。それで、日本医師会は、地方の小さい医療機関での看護職確保のために、准看護師制度の存続を主張しているようです。
看護職というのは、全国で120万人以上の需要があり、全国的に見れば、人員確保はまだまだ簡単ではないということのようです。女性が多い職種で、結婚・出産しても働き続けられる条件が確保されないと、どんなに養成しても仕事を続けることが難しいという課題も大きいようです。
さて、このことが臨床心理職とどういう関係があるかということについてですが。
資格とか養成とかいうことは、全国のどんな職場に、だいたいどのぐらいの人員を配置していくか、どのように配置していくかという見込みがあってやっていったほうがいいことだと思います。もし、心理の資格が、学部と修士を合わせた「Ⅰ種・Ⅱ種」のような資格になるなら、具体的に、その「Ⅰ種」「Ⅱ種」が、全国のどんな職場にどのように配置されるかということを想定していく必要があると思います。
臨床心理職は、看護師と違って、全国百万人も必要な職種ではないでしょう。現在の状況を見ていると、今の2万人程度でも「供給過剰」のような印象があります。
また、看護職に見られるように、この国の対人援助職が、労働条件の困難を原因に、職場を転々としたり、結局仕事を辞めたりする場合があるとすればそれも問題です。昨今の状況から、心理職も、「定着」できない職種になりつつあるのではという危惧があります。
私は、臨床心理職というのは、しっかり養成された一定の人数の人が、ある現場に定着して積み上げて仕事をすることが望ましいと思っています。
いろいろな困難の中でも、新しい「ひとつ」の資格が、将来的に、需要と供給のバランスのとれた「しっかりした養成」、つまり、「この資格の人なら、一定の技術・知識・倫理のトレーニングができている」ということで、必要な職場に信頼感と安定感を持って送り出せるようなシステムの構築に役立つようにしていかなくてはならないと思っています。



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