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2018年9月22日 (土)

公認心理師試験 文献リスト 改訂版

公認心理師試験勉強・基礎文献リスト(2018.9.22)
☆9月9日に第1回公認心理師試験が行われました。参考にしてよかったと思う本、もっとこれを読んでおいたらよかったとあとから思った本をあげておきます。

(1)「公認心理師」のためのテキスト・ガイドブック
① 一般財団法人日本心理研修センター監修「公認心理師現任者講習会テキスト」金剛出版
※もうすぐ2019年版が出版されるようです。2018年版は誤植など多かったので、いろいろと改訂されているのではないかと推測します。現任者講習会で何が話されているかを知るために必要なテキストで、経過措置期間の受験には必須と考えます。
② 子安増生・丹野義彦編「公認心理師エッセンシャルズ」有斐閣
※公認心理師本の中で結局いちばん参考になった本です。なぜかと言うと、法律と制度のところがよくまとまっていてわかりやすいからです(保健医療分野の菊池亜希子先生、司法・犯罪分野の藤岡淳子先生、産業分野の金井篤子先生)。基礎心理学はボリュームは薄いですが、子安増生先生が、このほんのちょっとの文字数の中に要点を手際よく盛り込まれているのは、まとめとしてとても参考になりました。ひっかかる部分もある本ですが、三団体で公認心理師推進の中にいた方々の本でもあるので、いろいろな意味で面白かったです。

(2)職責・コンピテンシーと生涯学習・連携
① 金沢吉展「臨床心理学の倫理をまなぶ」東京大学出版会
※職業倫理について読みながら深く考える本です。このテキストをもとにグループディスカッションができると勉強になると思います。
② 岩壁茂「専門家としての成長・発展とは何か?」(臨床心理学第15巻第6号通巻90号<シリーズこれからの心理職⑥ これだけはしっておきたいスキルアップのための心理職スタンダード>所収、金剛出版)
※岩壁先生の書かれたものを読んでおくことも必要かと思います。ひとまず読みやすい雑誌記事はこちらです。
③ 鶴光代・津川律子編「シナリオで学ぶ 心理専門職の連携・協働 領域別にみる多職種との業務の実際」誠信書房
※自分の経験が少ない領域について連携の流れを考えるのに良い入門書かと思います。

(3)概論書(心理学・臨床心理学・精神医学等)
① 大芦治「心理学史」ナカニシヤ出版
※たいへんな労作だと思います。ぜひみなさん一度お読みください。
② サトウタツヤ・高砂美樹「流れを読む心理学史 世界と日本の心理学」有斐閣アルマ
※大芦先生の本には取り上げていない日本の心理学史が記述されています。
③ 梅本堯夫・大山正編著「新心理学ライブラリ1 心理学への招待 こころの科学を知る」サイエンス社
※心理学の概論書もいろいろ見てみたのですが、自分が学生の頃に勉強したこの本がやはり私には有用でした。
④ 市川伸一編著「新心理学ライブラリ13 心理測定法への招待 測定からみた心理学入門」サイエンス社
※同じく、この本は実験の様子が想像しやすくて読んでいて面白いです。
☆心理学の概論書については、各自が自分のなじんだものを使われると良いと思います。
⑤ 丹野義彦・石垣琢磨・毛利伊吹・佐々木淳・杉山明子「New Liberal Arts Selection 臨床心理学」有斐閣
※日本心理学会医療心理学グループ系の臨床心理学がどのような概観かがわかりやすく丁寧に書かれています。ロジャースや人間性心理学のところを丹野先生が詳しく書かれているのに興味を持ちました。
⑥ 野島一彦・岡村達也編「公認心理師の基礎と実践3 臨床心理学概論」遠見書房
※こちらは、心理臨床学会系の概論書ですね。特に、ナラティヴアプローチや統合的アプローチのところが参考になります。
⑦ 下山晴彦・中嶋義文編「公認心理師必携 精神医療・臨床心理の知識と技法」医学書院
※公認心理師に必要な精神医療関係の事項が網羅されています。

(4)基礎心理学各分野
① 小山義徳編著・岩田・大芦・樽木・野中・伏見・真鍋共著「ライブラリ基礎からまなぶ心理学6 基礎からまなぶ教育心理学」サイエンス社
② 湯川進太郎・吉田富二雄編「ライブラリ スタンダード心理学8 スタンダード社会心理学」サイエンス社
③ 小塩真司著「Progress & Application パーソナリティ心理学」サイエンス社
④ 利島保編「朝倉心理学講座4 脳神経心理学」朝倉書店
⑤ 渡辺弥生・榎本順子編「発達と臨床の心理学」ナカニシヤ出版
⑥ 子安増生編「やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ よくわかる認知発達とその支援 第2版」ミネルヴァ書房
⑦ 村井潤一編「別冊発達4 発達の理論をきずく」ミネルヴァ書房
※これは1986年出版の雑誌ですが、フロイト‐三好暁光先生、ユング‐氏原寛先生、ワロン‐浜田寿美男先生、ゲゼル‐新井清三郎先生、ピアジェ‐岡本夏木先生、ヴィゴツキー‐守屋慶子先生、ルリヤ‐守屋慶子先生、エリクソン‐鑪幹八郎先生、ローレンツ‐小原秀雄先生という内容で、選ばれている発達心理学者も興味深いですし、執筆者の先生方も錚々たる先生方で、今回の試験勉強でも必要なところを読み直して参考になりました。

(5)公認心理師実践分野(医療保健、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働)に関する心理学と法規等についての参考文献
① 日本学校心理学会編「学校心理学ハンドブック 第2版 「チーム」学校の充実をめざして」教育出版
② 一般社団法人日本臨床心理士会監修・江口昌克編「ひきこもりの心理支援 心理職のための支援・介入ガイドライン」金剛出版
③ 一般社団法人日本臨床心理士会監修・奥村茉莉子編「こころに寄り添う災害支援」金剛出版
④ 加藤伸司著「認知症の人を知る 認知症の人はなにを思い、どのような行動をとるのか」株式会社ワールドプランニング
⑤ 松本俊彦著「もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応」中外医学社
⑥ 増沢高「虐待を受けたこともの回復と育ちを支える援助」福村出版
⑦ 「改正児童福祉法・児童虐待防止法のポイント(平成29年4月完全施行)」中央法規
⑧ 日本弁護士連合会子どもの権利委員会編「子どもの虐待防止・法的実務マニュアル 第6版」明石書店
⑨ 日本DV防止・情報センター編著「知っていますか?ドメスティック・バイオレンス 一問一答 第4版」解放出版社
⑩ 世界保健機関(WHO)「ICF 国際生活機能分類 国際障害分類改訂版」中央法規
⑪ 裁判所職員総合研修所監修「少年法入門 七訂第二補訂版」」司法協会
⑫ 藤岡淳子編「犯罪・非行の心理学」有斐閣ブックス
⑬ 山口裕幸・金井篤子編「やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ よくわかる産業・組織心理学」ミネルヴァ書房

(6)心理アセスメントと心理支援
① 黒田美保「公認心理師のための発達障害入門」金子書房
② 増沢高「事例で学ぶ社会的養護児童のアセスメント 子どもの視点で考え、適切な支援を見出すために」明石書店
③ 橋本和明編著「犯罪心理鑑定の技術」金剛出版
④ 英国内務省・英国保健省編「子どもの司法面接ビデオ録画面接のためのガイドライン」誠信書房
⑤ 中野敬子「ストレス・マネジメント入門 自己診断と対処法を学ぶ 第2版」金剛出版
⑥ 三田村仰「はじめてまなぶ行動療法」金剛出版
⑦ 佐治守夫・岡村達也・保坂亨著「カウンセリングを学ぶ 理論・体験・実習 第2版」東京大学出版会
⑧ 鑪幹八郎・川畑直人共著「心理学の世界 基礎編8 臨床心理学 心の専門家の教育と心の支援」培風館
⑨ 小海宏之著「神経心理学的アセスメント・ハンドブック」金剛出版
⑩ 岩壁茂著「心理療法・失敗例の臨床研究その予防と治療関係の立て直し方」金剛出版
⑪ 岩壁茂編「臨床心理学増刊第7号 カウンセリングテクニック入門 プロカウンセラーの技法30」金剛出版
☆心理検査について上記の小海先生の本以外で最新の網羅的なお勧めできる教科書を見つけられませんでした。やはり主な各検査の本来のガイドブックを復習しておくべきなのでしょう。

(7)その他
① 社会福祉士養成講座編集委員会「新・社会福祉士養成講座1 人体の構造と機能及び疾病 第3版」中央法規
※ 身体医学についてはこの社会福祉士のテキストがわかりやすかったです。ICFの解説も。

2018年4月21日 (土)

公認心理師について知るための基礎資料リスト

(☆や太字で個人的に考えた重要度を示します。)

(1)必須のもの

① 厚生労働省のホームページ「公認心理師」:法令などが網羅されている。

(検索方法)厚生労働省ホーム>政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>障害者福祉>公認心理師

 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html

   担当部署:社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課 公認心理師制度推進室

   (参考)法律の階層性:憲法//条約//法律(基本法/さまざまな法律)/政令・省令・告示/通知・通達//条例/規則、法律の成立/公布/施行

② 一般財団法人日本心理研修センター(公認心理師の試験機関・登録機関)のホームページ:講習会や試験の情報が掲載されている。 http://shinri-kenshu.jp/

③ 一般社団法人日本心理研修センター監修「公認心理師現任者講習会テキスト2018年版」金剛出版(2018)=「公認心理師の職責」についての基礎資料

   (正誤表:http://kongoshuppan.co.jp/info/info1597.html

※①②は更新情報を含めて常に確認すること。

※③は現任者コース(Gコース)以外の受験者も全員購入して勉強する必要がある。

 

(2)手引書・教科書

① 野島一彦・繁枡算男監修「公認心理師 基礎と実践」遠見書房(201823巻シリーズ

② 野島一彦編「公認心理師入門 知識と技術」日本評論社(2017

③ 子安増生・丹野義彦編「公認心理師エッセンシャルズ」有斐閣(2018

 

(3)参考資料

ⅰ)倫理・法律・制度・連携

① ☆☆☆金沢吉展「臨床心理学の倫理を学ぶ」東京大学出版会(2006

② ☆一般社団法人日本臨床心理士会倫理委員会「倫理ガイドライン(平成294月改定)」

③ 金子和夫監修・津川律子・元永拓郎編「心の専門家が出会う法律【新版】臨床実践のために」誠信書房(2016

④ ☆☆鶴光代・津川律子編「シナリオで学ぶ 心理専門職の連携・協働 領域別にみる多職種との業務の実際」誠信書房(2018

⑤ ☆下山晴彦・森岡正芳・岩壁茂・金沢吉展編(雑誌)臨床心理学90(第15巻第6号)「スキルアップのための心理職スタンダード」金剛出版(2015

⑥ ☆☆橋本和明編(雑誌)臨床心理学98(第17巻第2号)「知らないと困る倫理問題」金剛出版(2017

ⅱ)5分野の実践心理学と関連領域

① ☆下山晴彦・熊野宏昭・中嶋義文・松澤広和編 臨床心理学85(第151号)「医療・保健領域で働く心理職のスタンダード」金剛出版(2015

② ☆森岡正芳・増田健太郎・石川悦子・石隈利紀編 臨床心理学86(第15巻第2号)「学校・教育領域で働く心理職のスタンダード」金剛出版(2015

③ ☆下山晴彦・中嶋義文・妙木浩之・高橋美保編 臨床心理学87(第15巻第3号)「産業・組織領域で働く心理職のスタンダード」金剛出版(2015

④ ☆村瀬嘉代子・下山晴彦・熊野宏昭・伊藤直文編 臨床心理学88(第15巻第4号)「司法・矯正領域で働く心理職のスタンダード」金剛出版(2015

⑤ ☆村瀬嘉代子・森岡正芳・日詰正文・増沢高編 臨床心理学89(第15巻第5号)「福祉領域で働く心理職のスタンダード」金剛出版(2015

⑥ ☆☆☆下山晴彦・中嶋義文編「公認心理師必携 精神医療・臨床心理の知識と技法」医学書院(2017

⑦ ☆鈴木伸一編著「医療心理学の新展開 チーム医療に活かす心理学の最前線」北大路書房(2008

⑧ 下山晴彦・村瀬嘉代子編著「今、心理職に求められていること 医療と福祉の現場から」誠信書房(2010

⑨ 石隈利紀「学校心理学 教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス」誠信書房(1999

⑩ ☆石隈利紀・田村節子「石隈・田村式援助シートによる チーム援助入門 学校心理学・実践編」図書文化(2003

⑪ ☆文部科学省「生徒指導提要」平成223月 第5章:教育相談

⑫ 藤岡淳子編「犯罪・非行の心理学」有斐閣ブックス(2007

⑬ 太田信夫監修・金井篤子編「シリーズ心理学と仕事11 産業・組織心理学」北大路書房(2017

⑭ ☆松本俊彦「もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応」中外医学社(2015

⑮ 加藤伸司「認知症の人を知る」ワールドプランニング(2014

⑯ ☆☆増沢高「虐待を受けた子どもの回復と育ちを支える援助」福村出版(2009

⑰ 村瀬嘉代子監修・伊藤直文編「家族の変容とこころ ライフサイクルに沿った心理的援助」新曜社(2006

⑱ 下山晴彦・村瀬嘉代子・森岡正芳編著「必携 発達障害支援ハンドブック」金剛出版(2016

⑲ 内山登紀夫編「発達障害支援の実際 診療の基本から多様な困難事例への対応まで」医学書院(2017

⑳ 子安増生編「やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ よくわかる認知発達とその支援 第2版」ミネルヴァ書房(2005/2016

㉑ 植村勝彦・高畠克子・箕口雅博編「やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ よくわかるコミュニティ心理学 第3版」ミネルヴァ書房(2006/2017

㉒ 一般社団法人日本臨床心理士会監修 奥村茉莉子編「こころに寄り添う災害支援」金剛出版(2017

㉓ 一般社団法人日本臨床心理士会監修 江口昌克編「ひきこもりの心理支援‐心理職のための支援・介入ガイドライン」金剛出版(2017

㉔ 杉原保史「心理カウンセラーと考える ハラスメントの予防と相談 大学における相互尊重のコミュニティづくり」北大路書房(2017

㉕ (雑誌)精神療法Vol.43 No.6 「特集 公認心理師とチーム医療」金剛出版(2017

◎ 日本臨床心理士会雑誌の関連項目に目を通しておくこと。特に、医療保健委員会のチーム医療に関する項目、自殺対策の項目など。

 

ⅲ)心理アセスメントと診断

① 村瀬嘉代子・津川律子編「臨床心理学増刊第4号 事例で学ぶ臨床心理アセスメント入門」金剛出版(2012

② 小山充道編著「必携 臨床心理アセスメント」金剛出版(2008

③ 高橋依子・津川律子編著「臨床心理検査バッテリーの実際」遠見書房(2015

④ 津川律子「精神科臨床における心理アセスメント入門」金剛出版(2009

⑤ 小海宏之「神経心理学的アセスメント・ハンドブック」金剛出版(2015

⑥ 日本語版用語監修日本精神神経学会/高橋三郎・大野裕監訳「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院(2014)(高価な本なので⑦⑧参照のこと)

⑦ アレン・フランセス「DSM-5 精神疾患診断のエッセンス DSM-5の上手な使い方」金剛出版(2014

⑧ 森則夫・杉山登志郎・岩田泰秀編著「臨床家のためのDSM-5虎の巻」日本評論社(2014

⑨ ☆連合大学院小児発達学研究科 森則夫・杉山登志郎編「DSM-5対応 神経発達障害のすべて」こころの科学 日本評論社(2014

⑩ ☆☆増沢高「事例で学ぶ 社会的養護児童のアセスメント 子どもの視点で考え、適切な支援を見出すために」明石書店(2011

 

ⅳ)臨床心理学と心理支援

① ☆☆☆丹野義彦・石垣琢磨・毛利伊吹・佐々木淳・杉山明子著New Liberal Arts Selection 臨床心理学」有斐閣(2015

② 岩壁茂責任編集・『臨床心理学』編集委員会編 臨床心理学通巻100号「必携保存版臨床心理学実践ガイド」金剛出版(2017

③ 太田信夫監修 高橋美保・下山晴彦編「シリーズ 心理学と仕事8 臨床心理学」北大路書房(2017

④ 村瀬嘉代子・森岡正芳編「臨床心理学増刊第5号 実践領域に学ぶ臨床心理ケーススタディ」金剛出版(2013

⑤ ☆村瀬嘉代子「心理療法家の気づきと想像 生活を視野に入れた心理臨床」金剛出版(2015

 

ⅴ)基礎医学

① 社会福祉士養成講座編集委員会編「新・社会福祉士養成講座1 人体の構造と機能及び疾病 第3版」中央法規(2017

 

ⅵ)基礎心理学・心理学研究法

① 鈴木伸一監修・伊藤大輔他著 有斐閣ストゥディア「対人援助と心のケアに活かす心理学」有斐閣(2017

② 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治「New Liberal Arts Selection 心理学」有斐閣(2004

③ 子安増生編著「アカデミックナビ 心理学」勁草書房(2016

④ 南風原朝和・市川伸一・下山晴彦編「心理学研究入門 調査・実験から実践まで」東京大学出版会(2001

⑤ 日本心理学会 認定心理士資格認定委員会編「認定心理士資格準拠 実験・実習で学ぶ心理学の基礎」金子書房(2015

⑥ ☆日本心理学諸学会連合心理学検定局編「心理学検定一問一答問題集 A領域編」「同 B領域編」実務教育出版(2016

⑦ ☆日本心理学諸学会連合心理学検定局編2018年度版 心理学検定公式問題集」実務教育出版(2018

⑧ 日本心理学諸学会連合心理学検定局編「心理学検定 基本ワード(改訂版)」実務教育出版

2018年3月18日 (日)

公認心理師の職能団体と既存の職能団体の今後について

今年の11月30日には公認心理師の資格を持った心理職が誕生します。今後は、公認心理師の有資格者の職能団体が、有資格者の資質向上、職域拡大、行政との交渉などさまざまな団体活動を行っていくことになります。現任者講習会の状況を見ても、初年度で3万人以上の受験者とその8-9割の合格者が出るのではないかと予想されます。それだけの規模の職能団体をゼロから作るのは難しいことです。では、どういう選択肢があるでしょう。

以下に、公認心理師を推進してきた既存の職能団体を仮に○○心理士会とし、どのような選択肢が可能かを列挙します。その際、公認心理師と既存の民間資格○○心理士との関係をどうするかということも問題になってきます。

A-1. ○○心理士会は○○心理士会のままでいて、公認心理師職能団体はどこか他の団体(複数かもしれない)が作るのにまかせる。
A-2. ○○心理士会は○○心理士会のままでいて、○○心理士会から役員や財産等を拠出して公認心理師職能団体を別に作る。
A-3. ○○心理士会は○○心理士会のままでいて、○○心理士会から役員や財産等を拠出して関係他団体とも協議し、共同で公認心理師職能団体を○○心理士会とは別に作る。

B-1. ○○心理士会が定款変更して日本公認心理師協会(=○○心理士と公認心理師とそのダブルホルダーが会員)に移行する。○○心理士はその中で活動する。
B-2. ○○心理士会が定款変更して日本公認心理師協会に移行する。その中に○○心理士部会を作る。
B-3. ○○心理士会が定款変更して日本公認心理師協会に移行する。それとは別に、○○心理士会が財産等を拠出して新たな○○心理士会を設立する。
B-4. ○○心理士会が定款変更して日本公認心理師協会に移行する。それとは別に、有志によって新たに○○心理士会を設立する。
B-5. ○○心理士会が定款変更して日本公認心理師協会に移行する。○○心理士は、他の団体(たとえば××学会)の中に○○心理士部会を置いて活動する。

C-1. ○○心理士会が定款変更して○○心理士・公認心理師協会に移行する(ナカグロ案)。

以上の案はどの案も、「日本公認心理師協会」の中に、公認心理師、○○心理士、そのダブルホルダーの3種類の人が加入できる案を想定しています。(名称を「会」とせず「協会」としているのはそのためです。)複数団体共同で職能団体を設立する場合、さらに△△心理士など他の民間資格の会員も参加可能になるかもしれません。

どの案が選ばれるにしても、これまでの○○心理士会は大きく変化することになります。大事なことは、この変化について、会員に対する情報開示と説明が時間をかけてなされ、何らかの形で会員が選択をできることではないかと考えます。どの案にも一長一短があると思われますが、社会に役立つ心理職の団体として何が望ましいかを、会員一人一人が考える機会が必要ですね。

ここでは、例として○○心理士と書きました。これは、特定の民間資格のみを指しているのではありません。これから公認心理師に関係するすべての既存の民間資格のみなさんと、一緒に考えていければ良いと思います。

2017年11月 6日 (月)

精神分析学会で報告をしました

さる2017年11月4日に精神分析学会第63回大会のプログラムのひとつで公認心理師について15分ほどお話をしました。以下は私の読み上げた原稿です。参考までに。

 公認心理師資格については、成立までの歴史を踏まえないと「今」が理解できないと考えるので、簡単に経緯を振り返ってみます。

 日本では、1960年代から学会による資格認定の動きがありましたが、その実現は、1988年に日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士」の認定が始まるのを待たなければなりませんでした。これは、臨床心理学の大学教員、研究者、そして実践者の側からの自律的な動きとしての資格認定です。90年代以降、指定大学院制度の整備も進み、臨床心理士の有資格者は現在3万人を超えています。

 これとは別に、精神保健行政の側から臨床心理技術者の資格を創設する動きがありました。1960年代以降急激に精神科の病床数が増えた結果、患者の人権侵害が国際的に問題視され、日本の精神医療においてもソーシャルワーカーとサイコロジストの資格を整備しなくてはならないと行政が考えるようになりました。90年代に、厚生省、のちの厚生労働省は「医療心理師」の国家資格を検討しましたが、「臨床心理士」関係団体が求める資格と折り合いがつかず、内閣提案の国家資格化は断念されました。

 2005年に、この2つの流れを継ぎ合わせるようにして、議員立法によって「臨床心理士及び医療心理師法案」いわゆる2資格1法案を成立させようという動きがありましたが、いくつかの精神医療団体の反対で頓挫しました。その反対理由で大きかったのは、医療領域に2つの資格があると混乱するというものです。

 それで、2008年頃から、臨床心理士関連団体と、医療心理師関連団体と、さらに学術系心理学の連合団体とが集まって、「ひとつの資格」を作るための政治活動が展開されました。その結果できたのが、2015年に成立した「公認心理師法」です。公認心理師法は、2017年9月15日に全面施行され、2018年予定の第1回試験に向けた準備が進んでいます。

 では、公認心理師の基本的な性格を見てみましょう。
 まず「目的」です。「国民の心の健康の保持増進」とあります。「心の健康」は、厚労省がメンタルヘルスの訳語として政策区分に使っている言い方で、その中には、うつ病対策、認知行動療法の普及、災害時の心のケア、労働者の心の健康などがあります。つまり、公認心理師は、メンタルヘルスの専門職と想定されており、それは、2資格1法案の臨床心理士部分の「心理的な問題の解消又は軽減を図る」や、医療心理師部分の「当該傷病者の精神の状態の維持または改善に資する」という定義より幅広いものになっています。

 次に「業務」です。業務の分野を、「保健医療、福祉、教育その他」としています。2資格1法案に至る流れの中で、医療心理師が医療保健福祉分野限定の資格にしようと考えられていたのに対して、臨床心理士側からの最も大きい要望は、「汎用性」の資格にしてほしいというものでした。公認心理師はその「汎用性」を取り入れて、「保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働」という5つの主要な分野で働くことが想定されており、カリキュラムもそれに沿ったものになっています。

 具体的な業務内容は4つあります。1つ目は、「心理状態の観察、その結果の分析」つまり「心理アセスメント」にあたる業務。2つ目と3つ目は、支援を必要とする人や関係者に対する「相談」「助言」「指導」「その他の援助」です。大学院カリキュラムを見ると、支援の方法として、力動論、行動論・認知論、その他の理論に基づく心理療法が含まれており、「相談」「助言」「指導」は、これらの心理療法の理論と実践を「応用」したものと想定されています。4つ目の業務は普及啓発の仕事です。

 「公認心理師試験」の「受験資格」は、大学の学部、これには4年制の専門学校も含まれるのですが、学部プラス大学院修士課程か、学部プラス実務経験2年以上となっています。学部での全般的な心理学教育を重視する考え方は、医療心理師およびそれに呼応して2008年に発表された日本学術会議の職能心理士の構想に近いものだと思います。

 「医師の指示」については、のちほど触れます。

 「名称の使用制限」についてですが、公認心理師は、いわゆる「名称独占資格」です。すなわち、業務独占資格とは異なり、公認心理師の業務は誰が行っても良いものです。名称独占資格の意義は、同じ行為でもその資格を持っている人が行ったときは質が高くなるように、養成システムなどの諸条件を整えることにあります。公認心理師という国家資格ができても、名称独占資格である以上、この資格をもとに質の向上に努力しなければ、役に立つ専門職とは認められないという意味合いがここには含まれています。

 以上が公認心理師の骨格ですが、まとめると、公認心理師は、臨床心理学を含む心理学全般の学習と、主要5領域での実務的な実習を養成のベースにした、心理アセスメントと、心理相談等の心理支援と、普及啓発を行う、国民のメンタルヘルスの向上に役立つ職種であると言うことができると思います。今後は、日本心理研修センターなどを通して、5領域それぞれの現場ニーズに沿った研修が盛んになっていくだろうと予想されます。領域ごとの専門資格のような構想も進むだろうと思います。

 5領域それぞれにどのような仕事が想定されているかを少し見てみます。まず、医療保健領域では、精神科だけではなく、総合病院でのリエゾンや、緩和ケアなど、チーム医療の中で、心理アセスメントや心理面接や、それらをベースにしたコンサルテーションが期待されています。福祉領域では、児童福祉施設などにおいて、個別心理療法に加えて、生活場面でのアセスメントと関わり、それを基にした施設内外の他職種へのコンサルテーションなどが求められています。教育領域でも、チーム学校の取り組みの中で教諭やスクールソーシャルワーカーなどとの多職種連携が進められています。あとの2つの領域においても、心理アセスメントと心理面接などの直接的支援を行いながら、チームが円滑に機能できるような連携を期待されていると言えるでしょう。

 特に、医療領域では、今後、公認心理師がどのように診療報酬の請求に関わることができるかが課題になって来ると思います。現在のところ、具体的な動きはまだありませんが、特に精神科の通院精神療法との絡みでは、一筋縄ではいかない議論を経て事態が動いていくだろうと思われます。医療心理師推進の立場からは、診療報酬が大きい目的だったので、これからは、公認心理師の職能団体として、精力的にロビー活動を行っていくことになるでしょう。他の4領域でも、税金を使った施策の中での仕事が多いと思いますが、公認心理師の職能団体が、各領域の行政と交渉して業務の拡大を図っていくことになると考えられます。この点で、公認心理師の発展のためには職能団体をどのように運営していくかが重要だと、公認心理師を推進してきた役員の方々は考えているようです。

 それから、公認心理師について、とくに臨床心理士の中で懸念されていることは、「主治医の指示」の問題です。公認心理師法には、「公認心理師は、その業務を行うにあたって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。(第42条2号)」とあります。公認心理師の業務に医行為が含まれないとすれば、なぜ「指示」が義務とされるのかについて、明瞭な説明がなされたわけではありません。また、どの範囲までどのような手段での「指示」が行われるのかについて、現時点では全く未確定です。第1回試験の頃までにはガイドラインができると言われていますが、この件についての議論ができる限り透明になるよう、臨床心理士の側からも働きかけていく必要があると思います。(思いますが、現実には心理職の目の届かないところですべて決まることが危惧されます。)

 公認心理師と私設心理相談、つまり開業の心理士との関係は、あまり明確には語られていません。私設心理相談も公認心理師を取得することによって発展するだろうという期待の声も聞こえるいっぽうで、有料の個人心理療法についてのネガティブな声も聞こえてきます。医師の指示の問題が開業領域にどう影響するかも全くわかっていません。いずれにせよ、どの領域で仕事をするにしても、公認心理師は最低限の出発点であり、良い仕事ができるようになるためには、新人からベテランまで続けられる研修のしくみを作ることが必要です。

 この点で、臨床心理士が今後どうなっていくのかということも考える必要があります。私は、個人的には、公認心理師の成立で、むしろ臨床心理士には新たな役割が生まれる可能性もあると考えています。というのも、公認心理師は上に述べたように、非常に広い心理学全体と広大な支援の領域について一通りの知識を持って少し経験した人の資格として出発するもので、心をどう理解しどう向き合うのかについて、公認心理師の共通の理論的基盤があるわけではありません。ここが、臨床心理士と公認心理師のいちばん違うところだと思います。臨床心理士は、理想と現実にギャップがありすぎるとか、知識も技術も足りなさすぎるとか、学歴にこだわっているとか、さんざんな批判を浴びてきました。それでも、臨床心理士は、臨床心理学という一つの学問をベースにした資格として、人間とその心のあり方についての思索と議論と経験を蓄積してきたことは間違いなく、その探求の基盤は失われてはいけないのではないかと思います。文化というものは、簡単に根こそぎ破壊されてしまう可能性があり、一度破壊されると再興することはとても困難です。臨床心理士が、これまでの批判に対して自分たち自身を振り返りつつ、公認心理師以後の日本の心理支援にどう貢献できるか、今とても大事なところにいると考えています。

 最後に、精神分析学会と公認心理師について、少し考えてみます。ここで、藤山直樹先生の言葉を引用したいと思います(注)。藤山先生は、アセスメントとマネジメントについて書かれた論文集の監修をされる中で「日本の心理臨床と精神分析的臨床とは、いままでのみせかけの融和状態から脱出しつつある。」とされ、この先10年のうちに日本の臨床心理の大学院も実証主義的な実践が教えられるように変わっていくだろうと指摘されたうえで、「つまり日本においては、精神分析は精神医学(精神医療)と独立していたほどには臨床心理学(心理臨床)とは独立していなかったが、ようやく現在独立の機運があるのだと考えられる。うまくすると今後は、精神分析的実践はその独立を基礎として、心理臨床と連携していけるはずである。」と述べられています。私はこれを読んで、精神分析的実践の独立性ということと、独立しているからこそ連携できるということがとても大事だと感じました。

 ご紹介した通り、公認心理師は、目に見える社会のしくみの中で、それぞれの人間が限定された役割を果たしながら互いの場所を分け合っているという現実に、「いかに適応していくか」ということを基本的命題とした専門職になっていきそうに思われます。精神分析的実践は、目に見える現実を大切にしながらも、それだけでは心のことはどんどん見えなくなってしまうので、その、何とかしようとすればするほど見えなくなるものを知っていこう、また知り得ないことに正直であろうという、人間との向き合い方を徹底しているものだと思います。光が強まれば強まるほど影が濃くなるように、公認心理師で「公(おおやけ)」の力が強まるほど、独立した「私(わたくし)」の実践の意味も大きくなると考えます。その独立した私の位置から、公認心理師に対して、しっかりした精神分析的心理療法を提供できること、同時に、マネージメントやサポートにおいても精神分析的臨床が独自の視点を提供できることが、精神分析学会の課題であると考えています。
(注)藤山直樹(2014)『精神分析とマネジメント』 藤山直樹・中村留貴子監修、湊真紀子・岩倉拓・小尻与志乃・菊池恭子著「事例で学ぶアセスメントとマネジメント こころを考える臨床実践」岩崎学術出版社 

2017年7月17日 (月)

公認心理師養成カリキュラムを準備中の大学

※以下の情報は、2017年7月17日現在、Google検索を行い、各大学・大学院のホームページ上に公認心理師のカリキュラム作成を検討中あるいは準備中とある大学を拾い集めたものです。まだまだ準備中の大学はあるかと思います。もし情報あれば、コメント欄に書き込んでください。よろしくお願いします。

愛知学院大学心身科学部

http://psyphy.agu.ac.jp/shinri/article/2_587ad55995987/index.html

宇部フロンティア大学人間社会学部

http://www.frontier-u.jp/index.php/f-long-comp-ft/f-culture-comp

江戸川大学社会学部

http://www.edogawa-u.ac.jp/colleges/d_psychology/

追手門学院大学心理学部

http://www.otemon.ac.jp/nyushi/education/psychology/

桜美林大学

http://www.obirin.ac.jp/postgraduate/topics/year_2016/7fl296000007na7h.html

大阪経済大学人間科学部

http://www.osaka-ue.ac.jp/researchsupport/introduce_research/research/research410.html

大阪人間科学大学人間科学部

http://www.ohs.ac.jp/kouninshinrishi/

大妻女子大学人間関係学部

http://www.gakuin.otsuma.ac.jp/graduate/psychology/news/

大手前大学現代社会学部

http://www.otemae.ac.jp/faculty/dp_society/psychology.html

岡山大学大学院社会文化科学研究科

http://www.okayama-u.ac.jp/user/hss/education/sinri.html

香川大学医学部

http://www.med.kagawa-u.ac.jp/articles/000/001/220/

鹿児島大学法文学部

http://kadai-houbun.jp/jinbun/shinrigakucourse/

川崎医療福祉大学医療福祉学部

https://w.kawasaki-m.ac.jp/dept/welfare_cp/

川村学園女子大学文学部

https://www.kgwu.ac.jp/faculty/master/

関西学院大学文学部心理学科

http://psysci.kwansei.ac.jp/education/qualifications/

関西福祉科学大学心理科学部

http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/faculty/psychology/

吉備国際大学心理学部

http://kiui.jp/pc/gakka/shinri/shinri/

九州ルーテル学院大学人文学部

http://www.klc.ac.jp/info/2017/04/post-229.php

京都学園大学人文学部

https://www.kyotogakuen.ac.jp/department/psychology/

京都光華女子大学健康科学部

http://www.koka.ac.jp/faculty/undergraduate/dept_health/course_psychology.html

京都女子大学発達教育学部

http://www.kyoto-wu.ac.jp/gakubu/kyoiku/shinri/news/n6eaci0000005a3h.html

京都橘大学健康科学部

http://www.tachibana-u.ac.jp/news/2016/03/post-488.html

京都ノートルダム女子大学現代人間学部

https://www.notredame.ac.jp/shinri/shikaku.html

京都文教大学臨床心理学部

http://www.kbu.ac.jp/kbu/lp/official_psychology/

金城学院大学人間科学部

http://www.kinjo-u.ac.jp/pc/depart/depart_phycho.html

久留米大学文学部心理学科

https://www.kurume-u.ac.jp/site/bungaku/kouninshinrishi.html

神戸学院大学人文学部

http://www.kobegakuin.ac.jp/faculty/humanities/psychology/curriculum.html

神戸松蔭女子学院大学人間科学部

http://www.shoin.ac.jp/academics/course/human/p/index.html

神戸女学院大学人間科学部

https://www.kobe-c.ac.jp/courses/co_psy.html

国際医療福祉大学赤坂心理・医療福祉マネジメント学部

http://www.iuhw.ac.jp/akasaka/

埼玉学園大学人間学部

http://www.saigaku.ac.jp/tag/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E5%BF%83%E7%90%86%E5%B8%AB/

埼玉工業大学人間社会学部

https://www.sit.ac.jp/gakubu_in/ningenshakai/rinshou/

札幌学院大学心理学部

http://www.sgu.ac.jp/shinri/

筑波大学人間学群心理学類

http://www.human.tsukuba.ac.jp/psyche/index.php?month=2017-05

島根大学人間科学部

http://www.hmn.shimane-u.ac.jp/psychology.html

就実大学教育学部

http://www.shujitsu.ac.jp/department/kyouiku/kyouikushinri/kyouikushinri_info/33305.

html

昭和女子大学人間社会学部

http://content.swu.ac.jp/shinri/kounin/

白百合女子大学人間総合学部

http://www.shirayuri.ac.jp/course/human/psychology/

仁愛大学人間学部

http://www.jindai.ac.jp/news/2015/001733.html

駿河台大学心理学部

http://www.surugadai.ac.jp/gakubu_in/shinri/kouninsinrishi/

聖徳大学心理・福祉学部

http://faculty.seitoku.ac.jp/psychology/2017/06/02/%E8%81%96%E5%BE%B3%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6%E7%A7%91%E3%81%A7%E3%81%AF%E5%85%AC%E8%AA%8D%E5%BF%83%E7%90%86%E5%B8%AB%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%A1%88/

椙山女子学園大学人間関係学部

http://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/academics/hs/express/qualification/

鈴鹿医療科学大学保健衛生学部

http://www.suzuka-u.ac.jp/education/hygienics/welfare_cp.html

聖泉大学人間学部

http://www.seisen.ac.jp/news/9020

西南学院大学人間科学部

http://www.seinan-gu.ac.jp/psycho/qualification.php

大正大学心理社会学部

http://www.tais.ac.jp/faculty/department/clinical_psychology/blog/20151019/36926/

中京大学心理学部

http://nc.chukyo-u.ac.jp/gakubu/shinri/

筑紫女学園大学人間科学部

http://www.chikushi-u.ac.jp/education/psychology/sinrisi_curriculum.html

帝京大学文学部

https://www.teikyo-u.ac.jp/news/2016/0719_5483.html

帝京平成大学健康メディカル学部

https://www.thu.ac.jp/news/2017/05/170516-01.html

帝塚山学院大学人間科学部

http://www.tezuka-gu.ac.jp/topics/university/index.php?c=topics_view&pk=1445217858

帝塚山大学心理学部

http://www.tezukayama-u.ac.jp/news/information/2015/09/16/post-462.html

東亜大学人間科学部

http://www.toua-u.ac.jp/humansciences-faculty/cpc-cp.html

東海学園大学心理学部

https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/academics/humanities_psychology/special.html

東海大学文学部

http://www.hum.u-tokai.ac.jp/bp/

東京成徳大学応用心理学部

http://www.tsu.ac.jp/gra/juken/tabid/865/Default.aspx

東京福祉大学心理学部

http://www.tokyo-fukushi.ac.jp/information/2015/20160304.html

東京未来大学子ども心理学部

https://www.tokyomirai.ac.jp/faculty/child/support/shinrishi.html

東北福祉大学総合福祉学部

https://www.tfu.ac.jp/education/dwp/s9n3gg00000014wi.html

同志社大学心理学部

https://www.doshisha.ac.jp/news/2015/1211/news-detail-3024.html

徳島文理大学人間生活学部

https://www.bunri-u.ac.jp/faculty/human-life/topics/?p=70

東洋英和女学院大学人間科学部

http://www.toyoeiwa.ac.jp/daigakuin/kenkyuuka/

長崎純心大学

http://www.n-junshin.ac.jp/univ/information/daigakuin_news/_2015279916_201729.html

奈良大学社会学部

http://www.nara-u.ac.jp/faculty/soc/psychology/news/2016/36

新潟青陵大学福祉心理学部

http://www.n-seiryo.ac.jp/faculty/nsu/welfare/point_rinshoshinri/

新潟リハビリテーション大学医療学部

http://nur.ac.jp/job_qualification/cp/

西九州大学子ども学部

http://www.nisikyu-u.ac.jp/topics/detail/i/1142/faculty/207/

日本女子大学人間社会学部

https://www.jwu.ac.jp/unv/faculty_department/integrated_arts_and_social_sciences/psychology/news/2016/20170118.html

人間環境大学人間環境学部

http://www.uhe.ac.jp/info/ntf/160804000400.html

人間総合科学大学人間科学部

http://www.human.ac.jp/cp/faq1.html

梅花女子大学心理子ども学部

http://garden.baika.ac.jp/department/psychology.html

広島国際大学心理学部

http://hirokoku-u.net/psychology/news/1601.html

広島文教女子大学人間科学部

http://www.h-bunkyo.ac.jp/university/news/2016/01/post-281.html

比治山大学現代文化学部

https://www.hijiyama-u.ac.jp/news/archives/2017/06/000951.html

兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻

https://www.hyogo-u.ac.jp/course/cli_psy/qualification.html

福岡大学人文学部

https://wwwpsc.hum.fukuoka-u.ac.jp/grad/shikaku/

福島大学人間発達文化学類

http://hdc.educ.fukushima-u.ac.jp/graduate-school/psychology-development

福山大学人間文化学部

http://www.fukuyama-u.ac.jp/grd-human/

文京学院大学心理学部

http://www.u-bunkyo.ac.jp/faculty/human/kouninshinrishi.html

文教大学人間科学部

http://www.koshigaya.bunkyo.ac.jp/rinshou/sp/

北海道医療大学心理科学部

http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~web/news/index.php/view/581

武庫川女子大学文学部

http://www.mukogawa-u.ac.jp/dai/bungaku/shin/intro.htm

明治学院大学心理学部

http://www.meijigakuin.ac.jp/academics/graduate/psychology/

明星大学心理学部

https://www.meisei-u.ac.jp/lp/psy2017/index.html

目白大学人間学部

https://www.mejiro.ac.jp/graduate/news/2017/04/20170405/

立命館大学総合心理学部

http://www.ritsumei.ac.jp/psy/future/

ルーテル学院大学総合人間学部

http://www.luther.ac.jp/education/department/rinsyo/

 

2017年6月11日 (日)

外来精神医療の中で公認心理師に期待すること

(1)はじめに

 公認心理師ができるまでの50年間の経緯について、昨年2月に発行された「日本外来精神医療学会誌」第16巻第2号に「公認心理師成立までの経過と今後の展望」という題で特別寄稿をさせていただきました。その時あまり多く書けなかった「今後の展望」について今日はお話させていただく機会をいただけたことに感謝申し上げます。

 さて、拙稿にまとめさせていただいた歴史的経緯を一言で振り返ると、医療保健福祉の領域に特化した「医療心理師」の創設を求めるグループと、「臨床心理学」という学術基盤に基づいた「臨床心理士」の国家資格化を求めるグループの間での激しい政治的攻防の末に、その折衷案としてできたものが「公認心理師」ということになります。折衷案であるために、「公認心理師」は、医療保健福祉だけでなく、教育、産業労働、司法矯正などさまざまな領域に汎用性の資格であり、その学術基盤もおよそすべての心理学領域を網羅したカリキュラムになっています。すなわち、「公認心理師」は、その目的は「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」となっていますが、最大公約数的で焦点のあいまいな資格であるので、公認心理師を取得しただけで、それぞれの現場で十分な働きができるとは考えにくいものです。今後は、それぞれの領域での専門性を生涯研修で積み上げていくことが「公認心理師」が本当にできて良かった資格になるために必須であると考えられます。

 では、外来精神医療において公認心理師に求められることはどのような役割でしょうか。

 

(2)公認心理師の専門性

 公認心理師は、精神科医療七者懇談会が精神科医療のニーズをしっかりと伝えながら作って来た資格であり、従来の心理職に足りなかったと言われている医学と精神医学の2科目及び医療機関での実習が必修になっていることが1つの大きい特徴です。ただ、それでも現場のニーズに応えるだけの精神医学関連の知識と技術は決して十分なものではないので、資格取得後にどのように補うか、新人研修のしくみなどを含めた整備が必要だと考えられます。すなわち、卒後研修で、精神医療に特化した公認心理師を育てていくことが必要になるでしょう。

 また、公認心理師のカリキュラムを見てもわかる通り、心理学は非常に幅の広い多数の分野からなる学術です。その幅の広さは、今後の精神医療に実は活かしていけるものであると考えます。分野を見ていきますと、認知症や高次脳機能障害の治療に寄与する神経心理学。行動やストレスのコントロールの方法論を洗練させる学習心理学や健康心理学。トラウマ治療に関連した記憶心理学や感情心理学。人間の一生の発達をとらえる発達心理学。組織や人間関係のあり方に関わる社会心理学。そして、もちろん、心理療法の実践と研究を重ねてきた臨床心理学。これらはどれをとってもそれだけで一生かけて勉強しても追いつかないほどの大きい領域で、一人の公認心理師がすべてのエキスパートになることはできないでしょう。そこで、将来的にはそれぞれの公認心理師が専門分野、得意分野を持つようにしていきたいと考えます。

 精神医療に求められる公認心理師は、基礎として精神医学の知識技術を研修した上に、精神医療に必要な心理学の専門分野の専門性を持った人ということになるでしょう。たとえば、認知症専門の外来に老年心理学や神経心理学の専門性を持った公認心理師が配置されるなどのように、それぞれの公認心理師の専門性と、それぞれの精神医療機関の目的とが合致すれば、公認心理師は外来精神医療の良いパートナーになれるのではと思います。

 次に、外来精神医療の中で公認心理師が担うことが期待される仕事とはどのようなものかを見ていきます。

 

(3)外来精神医療のニーズと公認心理師

 まず、外来精神医療全体に関わって、心理学的なアセスメントにニーズがあると思います。特定の心理検査を行うだけではなく、面接や行動観察によるアセスメント、家族力動や集団力動のアセスメント、それらを総合した心理学的な所見が、それぞれの患者の治療計画に活用されるように、公認心理師がアセスメントの技量を向上させる必要があると思います。症状の変化に、生活史上のできごとや外傷的な体験が関わっている場合や、パーソナリティの諸要因が関係している場合、発達特性の影響が大きい場合など、それぞれに治療や支援の道筋が異なると考えられるときに、公認心理師がいかに有効な助言ができるかが問われていると思います。また、デイケアなどの集団プログラムを持っている精神医療機関においては、集団プログラムの立案や運営においても心理学的アセスメントが生かされると考えます。

 次に、もっとも患者数が多いと考えられる、気分や不安に関係した疾患群、うつ病や、不安性障害、強迫性障害などですが、それらの治療においては、認知行動療法や対人関係療法などのように、薬物療法と組み合わせて行うことによって症状の軽減や治癒に有効に作用する心理学的アプローチが知られています。医師や看護師等との協働で、公認心理師がこれらの疾患群の治療を補助する心理療法の担い手として、全国のどの外来精神科にも当たり前に存在する職種となることが望まれます。

 それから、これまであまり注目されて来なかったかもしれませんが、統合失調症などの慢性の精神障害者の地域精神医療福祉の領域で、公認心理師が活躍してほしいというのが、私自身が個人的にもとても願っていることです。統合失調症の治療と支援において、心理職が果たせる役割としては、アセスメント、特に、統合失調症の場合は、症状に目が向けられがちですが、その背景にある生活史や対人関係の要因が実は経過に深く関わっている場合も多々あると思われ、その一人一人の患者の歴史や生活を、時間をかけて注意深く聞き取りアセスメントしていく役割は、実は心理職がもっとも得意とするところではないかと思います。また、多機能型精神科診療所のデイケアのスタッフとして、集団力動をしっかり観察しながら、集団が治療的な動きを持ちやすくなるような介入を行うことは、心理職の得意とする分野であると思います。実際、心理職がリーダーをして、それぞれのメンバーと全体の動きを丁寧に観察しつつ、自発的な集団の動きを促進しつつ、効果的に介入しているようなデイケアの事例を見聞きすることがあります。心理教育やSSTなどのプログラムも含めて、今後のデイケアの発展に公認心理師が寄与することが不可欠ではないかと思います。

 さらに、精神障害者の分野では、現在注目されているオープンダイアローグも含めて、地域の中で、それぞれの家を訪問して行うアプローチに公認心理師も参加していきたいと思います。これまで、国家資格がないことでいちばん悔しかったのは、訪問の仕事に十分に参加できなかったことです。これからは、公認心理師が外に出て、地域や家庭で患者や家族と積極的に出会う職種に脱皮できると考えます。その時に、上記のような心理アセスメントの技術や、心理療法や集団への介入の技量が活かされるものと思います。

 また、従来の外来精神医療は、おとなの精神疾患の薬物治療がメインの仕事でした。しかし、高齢者のニーズや、子どものニーズが高まっているのが近年の状況であると思われます。また、アルコール依存症や摂食障害などの、嗜癖に関連した問題群への対応や、ひきこもりや職場不適応などの社会適応に関連した問題群など、薬物療法がメインではなくむしろ心理・社会的なチームアプローチが必要な問題への対応は今後もニーズとしては増えていくものと考えられます。すべての精神科医療機関がそれに対応できないかもしれませんが、あそこは子どもを見てくれるよ、あそこは摂食障害が専門だよというような、専門領域を持つことが精神科外来にとっても強みになるでしょうし、その専門性に特化した公認心理師がチームの中に存在することによってその強みを生み出すことが期待されると思います。

 

(4)最後に

 最後に、少し危惧していることを述べます。京都市で真摯な精神医療を続けて来られているいわくら病院のチェヒョンイン先生が昨年「メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服」という名著といっていいと思うのですが、労作を出版されました。私自身は、精神科クリニックの片隅で、まさにこの本に書かれているような「外傷的育ち」によるさまざまな生きづらさや苦悩を持った人たちの息の長いカウンセリングの仕事をさせてもらって来ました。振り返れば、国家資格がないことでかえって自由にそういう仕事をして来られたのかもしれないと思います。しかし、今後、公認心理師の心理面接に診療報酬が導入されると、面接の回数や、頻度、1回の面接時間、あるいは心理面接の適応される診断名などに制約が加えられるかもしれません。「外傷的育ち」の人たちは、問題は深刻ですが、症状としては従来の診断には明確にはあてはまらず、薬物療法に反応しない場合もあるので、なかなか医療の枠の中に居場所がありません。しかし、それらの人々は経済的にも厳しい状況に置かれている場合が多く、何とかして社会保険の中に治療の機会が残されないかなと思っています。

 公認心理師が精神科医療にこれまで以上に参入することで、精神科医療のコアな領域と、周辺領域、それぞれの役割分担が整理されていくものと考えます。公認心理師が、精神科的な問題に苦しむ人々に与えられる希望のひとつになることを願ってやみません。

2017年5月13日 (土)

職能団体の運営について

公認心理師カリキュラム等検討会が今月末で終わる。実際に何回か傍聴しつつ資料や議事録を読んだが、やはり国家資格というものは、厚生労働省・文部科学省の政策や、既存の法律・制度、先行する国家資格職種の要望などに大きく規定されるのだなという印象を持つ。これは当然のことではあるが、私たち臨床心理職は自分たちが実際にどれぐらいの政治力を持っているかをもっと厳しく認識しておく必要があったと思う。

ここで、職能団体の中で公認心理師の推進に協力してきた一人として、組織のあり方についてのいくつかの反省点を記しておきたい。当たり前のことばかりだが、できてこなかったこと。

(1)「自分ならできる」とか「自分にしかできない」などの傲慢さに気づくこと。同時に、「あの人ならできる」とか「あの人にしかできない」などの依存体質にも気づくこと。

(2)議論のプロセスが見える公の会議を可能な限り行うこと。会員全員が議事録と資料を読めるようにすること。

(3)組織の密室化や私物化が起きたら、それがまだ小さい状態のうちに改善すること。

(4)関連する複数の組織の役員や、ひとつの組織の中の複数の委員会の担当者を、限られた少数の人たちで兼任して占有することを避ける。

(5)会員は組織の運営や政治的活動に少しでいいので関心を持つこと。たとえば機関誌や議事録にざっと目を通す程度には。

(6)組織運営や政治的活動を担当する役員や会員に敬意と対価(調査研究費や実費のようなもの)を払うこと。同時に、運営や政治的活動を担当する役員や会員は、そういうことが苦手だったり、関心が持ちにくかったり、さまざまな温度差を持つ会員がいることを理解した上で、自分たちがそれら全員の代表であり、全員のための運営担当者であることを忘れないこと。

(7)役員や委員などが一定期間で交代するようなしくみを作ること。世代交代を促し、超長年月にわたって同じメンバーが運営にあたることを避けること。30代や40代の人が積極的に役員になること。

(8)立場や意見の異なるグループが組織内で共存できることは組織の健全さの指標となる。そして、対外的な交渉に際しては、組織として意見を一致させてあたること。

(9)組織としての意見の一致には、どんなに時間がかかっても良い。組織としての意見の一致にかける時間と労力が、実はその組織の実力となるだろう。

(10)十分な資料を集め、客観的な事実認識を基礎として組織の方向性を定めること。

※組織の中で敵味方が分かれているという認知をしてしまっている場合、味方を集めた会議は愚痴やおしゃべりの場になりやすい。敵がいると認知される会議では大事なことを話さず黙ってしまい、会議が終わった後に少数の味方に個人的に話す傾向が生じる。難しいと感じている交渉事では、個人と個人のコネクションで水面下に物事を進める傾向が強まる。それらは「政治的にうまい」方法だと誤解されているようだが、長期的展望からすると、組織にとって破壊的であると思う。

2017年3月11日 (土)

公認心理師成立までの経過と・・

現在、公認心理師法カリキュラム等検討会ワーキングチームが最終段階を迎えています。公認心理師が成立するまでの経過について、「外来精神医療第16巻第2号」(2016)に書かせていただいた原稿を、期間限定でこちらに張り付けておきます。公認心理師法成立までの経過をまた良く知らないという方で興味があれば読んでみてください。(長文です。資料部分は省略させていただきます。)

特別寄稿「公認心理師成立までの経過と今後の展望」
今井たよか(公認心理師推進ネットワーク)

1.はじめに
 1995年は、「精神保健法」が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改正され、精神障害者の自立と社会参加の促進がはじめて法律に明記された年である。それは、1950~60年代に広がった入院中心の精神医療から、地域社会の中で一人一人の精神障害者の生活を支える外来中心の精神医療への転回点の1つであった。精神障害者とその家族の生活を支えるためには、地域やさまざまな社会資源の人たちと共に外来精神医療の従事者が大きい連携の輪を作る必要がある。そのためにも、精神医療チームを構成する福祉及び心理の専門職の法的整備が急務となっていた。
 その年の7月、設立2年目の全国保健・医療・福祉心理職能協会(以下、全心協)が『危機にある心理士の国家資格』と題するシンポジウムを行っている。その中で当時の厚生省保健医療局精神保健課課長補佐であった高橋俊之氏は次のように述べている。
「心理の資格化問題については、数年前から研究班で研究を行っており、その結果が昨年の春まとまっている。また、昨年秋からは、厚生省としても、具体的案の検討を行い、全心協や臨床心理士会、児童相談所の心理判定員の全国組織などと討議を行い、また、医療関係団体の関係者とも、意見交換を行った。その過程で、心理の国家資格化のために詰めていくべき課題が一層明確になってきたが、まず、その筆頭は、医師や医療との関係の整理である。」「これは、医師との権限争いというレベルの議論ではなく、そもそも、我が国の精神医療やカウンセリング事業の体制はどうあるべきか、国民にとって、何が望ましいのか、という議論である。」
 この「医師や医療との関係の整理」という課題が、その後もずっと心理職の国家資格化に大きい影響を与えた。本稿では、公認心理師法成立まで半世紀にわたる国家資格化の経過を振り返るとともに、ほんの少しだが今後の展望を提示したい。

2.臨床心理士資格の認定
 現代の臨床心理学は、19世紀末から20世紀初頭にかけて欧米で生まれたものだが、日本においても20世紀に入ると知能検査などの心理査定の方法が少しずつ紹介されていった。第二次世界大戦後の1945~50年にかけて、少年鑑別所や児童相談所等の法律が整備され、心理専門職の任用が全国的に始まった。精神医学の領域でも、1950年代には、臨床心理学を学んだ人材を登用し育成する動きが出始めた。同時期に臨床心理学の学会や研究会の組織化も活発になり、資格問題も検討されるようになった。
 1960年代になって、日本応用心理学会をはじめとする19団体による心理技術者資格認定機関設立準備会が発足、1964年には日本臨床心理学会(以下、臨床心理学会)が設立され、当初から資格問題に積極的に取り組んだ。そして、教育、医療、福祉、矯正等の領域横断的な資格としての「臨床心理士」の第1回審査が1969年に予定されるところまで進んだ。しかし、学会を母体とした資格認定はそこで中断する。
 60年代の資格認定が中断した背景には、まず、所管省庁、医師との関係、大学院の養成課程等の資格を構成する諸要件について、厚生省や関係諸団体との折衝が困難であったことがあったと言われている。さらに、おりしも世界的に起こっていた学生運動の中で、日本でも大学や精神医療のあり方が批判の対象となり、その結果、臨床心理学会からは、資格構想を先導した理事やその賛同者たちが多数脱退することになった。
 こうして、60年代に資格認定を推進した臨床心理学者たちは、拠り所となる学会をいったん失うことになった。70年代は、新たな世代が臨床心理学の世界に参加し、ロジャーズのカウンセリング理論に加えて、ユング心理学や精神分析的心理療法等が導入され、日本で発展した箱庭療法、臨床動作法等とともに新たな実践と研究が積み重ねられた。資格問題をいったん離れ、今日の日本の臨床心理学の基礎となるエネルギーが蓄えられた時期であろう。
 精神医療では、精神科病院が拡大を続けるいっぽうで、1972年には通院精神療法、74年には精神科デイ・ケアに保険点数が与えられた。特に、精神科デイ・ケアは、医師と看護師だけでなく、精神科ソーシャルワーカー、作業療法士、臨床心理技術者などの多職種がチームで共に働く新しい経験の場になった。学習や実験などの基礎的な心理学を大学で学んだ人たちも、この時期に臨床心理技術者として少しずつ精神医療に参加していったようである。
 80年代に入ると、臨床心理学の世界が大きく動いた。1982年には、日本心理臨床学会(以下、心理臨床学会)が発足。発足時すでに千人を超える会員が集まった。そして1988年、心理臨床学会はじめ関連16学会の協賛で日本臨床心理士資格認定協会(以下、認定協会)が発足し、臨床心理士の認定が始まった。翌1989年には職能団体としての日本臨床心理士会(以下、臨床心理士会)も設立された。
 以来認定を受けた臨床心理士は、2016年4月には3万人を超える予定であり、民間資格であるものの一定の社会的認知を受けて来たと言える。臨床心理士は、①臨床心理学の専門家として人の心に関わるという重大な責任を全うできる人材であること、②そのために、大学院修士課程修了以上の学識を有すること、③人の心に関わる責任を自立的に引き受けるという意味において医師との対等な関係を持つことを理念として養成されて来た。この理念の実現のために、認定協会は大学院の充実に力を注いだ。現在では、専門職大学院6校も含めて、169校の大学院が臨床心理士養成の指定を受けている。
 臨床心理士は、このように学会の連合体を母体として認定が始められたが、いずれ「臨床心理士」という国家資格として法制化する構想を持っていた。医療の世界から見た時、臨床心理士が、臨床心理学の専門家としての国家資格化を目指して出発したという理念と歴史は知ることすら難しいものだったかもしれない。臨床心理士の世界と医療の世界の資格問題に対する乖離は大きく、国家資格化の過程は想像以上の難路となった。

3.厚生省による臨床心理技術者の資格制度の研究
 臨床心理士の認定が開始された頃、厚生省(2001年からは厚生労働省)は、精神科ソーシャルワーカーと臨床心理技術者の国家資格化に本格的に着手した。それは、1990年の臨床心理技術者業務資格制度検討会に始まり、1991年「臨床心理技術者の業務と養成の研究」、1995年「精神科ソーシャルワーカー及び臨床心理技術者の業務及び国家資格化に関する研究」、1997年「臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究」、2000年「臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究」と、2002年の最終報告まで12年間にわたって継続された。
 この一連の厚生科学研究に、臨床心理技術者の当事者団体としてどの団体が参加するかという課題があった。前節で述べたように、臨床心理士の団体は「臨床心理学の資格で名称は臨床心理士」「領域横断的」「医師と対等で自律的な関係性」「大学院修士修了」を要件とした「臨床心理士法」が作られることを希望していた。厚生省や精神医療関係者の方針は、「精神保健領域の資格」「一部に医行為が含まれるので医師の指示を受ける」「4年制大学卒業を基本とする」であり、臨床心理士団体とは国家資格に対する考え方が全く異なっていた。
すなわち、臨床心理士会は、「臨床心理学」という学術分野を基礎としてあらゆる領域で臨床心理学に基づいた行為を行う専門職の国家資格を構想していたのに対して、厚生省及び精神医療関係者は、精神保健の領域に限定してその既存の制度的な枠組みの中で必要とされる業務を行う心理職を規定する国家資格を想定していた。後に、心理職の国家資格化問題の経緯を丹念に研究した教育社会学者の丸山和昭は、前者を「学術基盤型」、後者を「領域基盤型」と名付け、専門職像の違いとして整理している(丸山、2012)。厚生省及び精神医療関係者の求める領域基盤型の国家資格を実現するためには、臨床心理士会とは異なるスタンスを持つ心理職の当事者団体が必要とされていた。
 この流れの中で、1993年に、厚生省及び精神医療関係者の方針に基本的に賛成する考え方の心理職が集まって全心協が設立された。全心協を構成したのは、20年前に資格に反対した人たちが残った臨床心理学会で活動している心理職たちや、臨床心理士認定以前に心理学を学んで精神医療や心身医療等に従事してきた心理職たちであった。全心協の設立に先立って、臨床心理学会は厚生省の国家資格に協力する立場を採択したが、それに反対した会員はさらに別の学会を作って臨床心理学会から去った。
 こうして、12年間の厚生科学研究は、心理職の当事者団体として、臨床心理士会、全心協、それに、全国児童相談所心理判定員協議会が参加し、途中からは日本心理学会の代表者も参加して続けられた。この中で特に焦点となったことは、「医師や医療との関係の整理」、すなわち「医行為」と「医師の指示」の問題であった。出発点となる資格制度検討会の1994年の取りまとめでは、この点を以下のように述べている。
 「当検討会においては、臨床心理技術者による心理業務の中には、精神医療の現場において、精神障害者を対象として、他の医療従事者と連携を図りながら行われるものがあり、仮にこれらが適切に実施されない場合には患者の精神面において重大な影響を及ぼすおそれがあるものと考えられることから、心理業務の中には、医行為に該当しうるものが存在する可能性が高いものと考えられる。」
 これに対して、臨床心理士会からは、臨床心理行為は医行為という狭い枠の中に閉じ込めることのできない人間の生き方に関するあらゆる行為と関係しているという意見が出された。すなわち、臨床心理士会は、医療領域に限定した国家資格ができることで、すべての領域に共通する臨床心理学の独自性が損なわれることを危惧していた。これに対して、全心協は、心理職はチーム医療の中で医行為に部分的に関わるとし、「医行為性のあるケアにおいては、医師の指示を必要とすることは、患者の利益擁護の点からも当然のことである。」と表明していた。
議論は、ほとんど平行線のまま推移した。2002年の報告書では、医行為の問題は(資料1)のように整理され、医療・保健施設に関わる範囲に限定した名称独占の「医療保健心理士」が提案された。しかし、この時間経過の中で、全心協の会員が数百名に留まったのに対して、臨床心理士会の会員は数千人を超えていた。多数の当事者が反対している状況では、内閣提案による立法は不可能だった。ここから、心理職あるいは臨床心理職の国家資格創設は、議員立法に舞台を移すことになった。

4.「臨床心理士及び医療心理師法案」の断念
 厚生科学研究が終了した直後から、「医療心理師」の国家資格を目指す全心協と、「臨床心理士」の国家資格を目指す臨床心理士会がまったく別々にロビー活動を始めた。全心協は、日本心理学会や日本精神科病院協会(以下、日精協)の協力を得ていた。臨床心理士会は、認定協会やスクールカウンセラー事業を通して、さらに当時の河合隼雄会長が文化庁長官だったことから、文部科学省とのつながりが相対的に強かった。また、全国に組織を持っている臨床心理士会の地元での陳情活動は、多くの議員を動かす力があった。
 2つの異なる国家資格化の動きは、まず医療心理師側から2004年9月「医療心理師国家資格制度推進協議会(以下、推進協)」の設立、2005年2月「医療心理師国家資格推進議員連盟」の発足としてまとまり、臨床心理士側は、2005年3月「臨床心理職国家資格推進連絡協議会(以下、推進連)」の設立、同3月末「臨床心理職の国家資格化を通じて国民の心のケアの充実を目指す議員懇談会」の発足へと進んだ。両方の議員連盟に参加している議員もあった。
 精神保健領域限定型資格と領域横断的学術基盤型資格という、木と竹のように似て非なる2つの資格だが、議連はこれらを継ぎ合わせることを試みた。その作成途中、医療心理師法案において、医師の指示はあるものの、医行為の規定、すなわち保健師助産師看護師法の一部解除の規定がないということがわかった。この機会に「臨床心理士」国家資格の成立を願う臨床心理士会は、医療心理師法案が医行為を規定しなかったことを受けて、「医師の指示」について、「医療機関に於いてはその診療の責任者である医師の指示に従う」という責任論としての受け入れを認めることを、河合会長に一任の形で了承することになった。
 その結果として取りまとめられたのが、「臨床心理士及び医療心理師法案」(以下、2資格1法案)の要綱骨子案であった。2資格1法案における医師や医療との関係は、「臨床心理士」は「病院、診療所その他の主務省令で定める医療提供施設において、医師が医療を提供する傷病者に関してその業務を行うに当たっては、医師の指示を受けなければならないこと。」とされ、「医療心理師」は「その業務を行うに当たっては、医師の指示を受けなければならないこと。」とされていた。すなわち、2資格1法案の臨床心理士法部分の医師との関係は、「医療提供施設」という場を限定したものになっていた。
 この法案要綱骨子案は同年7月の議員連盟合同総会で承認されたが、直後から日精協や日本精神神経科診療所協会をはじめとする精神医療団体から反対の声が強くあがり、それ以上の進展が見込めない状況に陥った。精神医療団体が2資格1法案に反対した理由を振り返ると、資格が2つできることの妥当性がどこにあるのか、臨床心理士という既存の民間資格の名称がそのまま使われることで国家資格の公平性はどう確保されているのか、臨床心理士が領域横断的に業務を行うとして、どの領域にも存在する傷病者に対する業務の安全性はどう確保されるのか、そもそも2資格1法案で医行為が規定されていないのはどういうことなのかというような疑問に加えて、それらの疑問を検討するだけの時間的余裕が与えられることなく国会提出が急がれたことへの反発も大きかったように思われる。
 2006年には、議連は2資格1法案の国会提出を断念したようだった。それぞれの団体が虚脱状態に陥りながら、互いに交渉の糸口を探していた。臨床心理士の中には、2資格1法案、あるいはその中の臨床心理士法案の実現を望む声も根強かった。しかし、2005年の経験から、精神科医療団体が強く反対するような法案は成立しないことが明らかだった。
 水面下での模索が続く2008年、日精協の代表者と臨床心理士会の代表者が意見交換を行い、日精協の看護・コメディカル委員会が考えている条件が提示されたことが日精協誌(林、2015)に掲載されている。示された条件は、1つの資格であること、医療の場での医師の指示が明示されていること、「臨床」という名称を使用しないことの3点であったと言う。
また、同じ2008年に、日本学術会議心理学・教育学委員会の健康・医療と心理学分科会から「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」と題する提言がなされた。これは、それまでの全心協や臨床心理士会とは異なる動きであったが、全心協は歓迎し、臨床心理士会は危機感を持った。全心協にとっては、これは医療分野に限定した国家資格化を後押しする動きであり、臨床心理士会にとっては、臨床心理学ではなく「心理学」という別の学術基盤を持ち出す動きとして警戒されたのである。
 さらに同じ年、日本心理学諸学会連合(以下、日心連)が、2資格1法案を支持しつつ、国家資格の早期実現のために関係諸団体の意見を集約し、協調、共存案の立案を目指して行動するという内容の決議を行った。これは、心理学の世界全体の大同団結による議員立法を目指す動きで、公認心理師の直接的な出発点になった。

5.3団体会談による取りまとめ
 明けて2009年2月に、日心連が推進協と推進連の間を取り持つ形で、3団体会談と呼ばれる協議が開始された。日心連、推進協、推進連の3団体はそれぞれが学会や職能団体の連合体である。3団体会談は、連合体の代表が集まって協議と調整を行う場として機能した。3団体全体の参加団体は少なくとも70以上あり、団体間でも団体内でも、資格に対する意見はさまざまで温度差もある。それは、まるで結合のゆるいブロック作りの巨大船でゆっくりと海を渡るようなもので、その進行には構成各団体の慎重な意思決定の積み重ねが必要だった。
 また、3団体会談とは別に、精神医療団体は、精神科7者懇談会(以下、7者懇)の中に心理職に関する検討委員会を設置し、3団体会談の動きを見据えながら7者懇としての見解を発信していくことになった。2013年の7者懇の提言には、「医療分野における心理的行為の多くは、医師が行うべき診療等の医行為に含まれるので医師の指示を受けなければならない。」とあり、あくまでも「医行為」としての医師や医療との関係の整理を求めている。
 3団体会談では、国家資格早期実現のために、心理学の世界が1つにまとまることと、精神医療団体が反対しない進め方ができることが優先されていた。そのため、関係諸団体に配慮した内容の「要望書」が2009年から段階を経てまとめられ、2011年10月に確定版となった。要望書の国家資格の内容に関する項目は5点で、①名称は「心理師(仮称)」で名称独占、②実践諸領域における汎用性がある、③業務内容は、アセスメント、心理的支援、心理相談、心理療法、問題解決、地域支援等に加えて、予防や教育も行う、④他専門職との連携をとり、特に医療提供施設では医師の指示を受ける、⑤受験資格は「学部卒業+修士課程修了」または「学部卒業+数年間の実務経験」であり、心理学及び心理学関連科目等を履修することとなっていた。すなわち、医師や医療との関係については、2資格1法案の臨床心理士法部分を踏襲した内容になっていた。
 この要望書を携えて改めてロビー活動が始まったが、3団体に属していない認定協会と臨床心理士養成大学院協議会(以下、臨大協)、つまり臨床心理士を養成し認定する立場の2団体から臨床心理士会や心理臨床学会の行動に対する懸念が表明された。「学部卒業+実務経験」での受験資格を認めることや、専門性の根拠としての「臨床心理学」の明示がないこと等から、「心理師(仮称)」の国家資格は臨床心理士とは全く別の資格で、臨床心理士の実績や専門性が損なわれるのではないかという懸念だった。また、進め方に対して、臨床心理士会と心理臨床学会が、認定協会及び臨大協との4団体での合意ができないままに3団体の要望書に賛同していることが批判された。
 こうして、3団体会談以降は、臨床心理士内部の、臨床心理士創設の理念を堅持しどんなに時間をかけても国家資格に反映させるべきであるとする立場と、関係諸団体との妥協によって国家資格が早期に成立することを望む立場の違いが、次第に露わになっていった。
 国家資格の早期実現を望む声の背景には、心理的な支援に対する社会のニーズの多様化がある。ゼロ年代に入って、発達障害や認知症等への心理的支援、自殺対策、職場のメンタルヘルス、精神障害者やひきこもりへのアウトリーチ等、多様な心理的支援のニーズが注目されるようになった。同時に、1997年に国家資格化された精神保健福祉士はじめ、作業療法士、言語聴覚士等の専門職が、チーム医療等の分野で実力を伸ばしている状況があった。3団体要望書を積極的に推進するグループには、このまま国家資格がない状態が長引くと、制度面の弱さから、多様なニーズに心理職が応じられなくなり、心理職の働く余地がなくなってしまうのではないかという切迫した危機感があった。
 国会議員の間に3団体要望書への理解が浸透し、2012年3月には「院内集会」が盛大に開かれた。同年6月には自民党「心理職の国家資格化を推進する議員連盟」、8月には民主党「心理職の国家資格化を推進する民主党議員連盟」が設置された。さらに議員立法に向けた動きが加速されることを期待して、2013年4月には「日本心理研修センター」が設立され、心理師(仮称)の成立後に試験・登録機関を引き受けられるよう諸団体に賛同を要請した。議連は動き始め、法案を作成する準備が進められた。

6.「公認心理師法」成立
 2014年4月、いよいよ「公認心理師法案」の要綱骨子が臨床心理士会等の関係諸団体に説明された。しかし、ここでまた「医師や医療との関係」に関わる条文を巡って困難が生じた。公認心理師法案は、ほぼ3団体の要望書通りの内容だったが、「医師の指示」に関しては、「医療提供施設」というような「場」を限定する条文がなかったのである。それがどういう意味なのか、このまま法案が成立するとどういうことが起きるのかについての説明を得ることは難しく、特に、臨床心理士の一部や認定協会・臨大協の関係者から疑義が表明された。問題になったのは、法案の第42条である(資料2)。しかし、この条文は、関係諸団体及び各省庁等の調整を経て書かれているものであり、改変は難しいというのが作成者の考え方であるようだった。
 法案の国会提出に向けて、各党内の手続きが進む中で、臨床心理士を含む心理職当事者の間では、法案が原案のまま可決成立することが望ましいと考える立場と、法案の成立が困難になっても危惧される点を明らかにすべきであると考える立場が入り乱れることになった。そして、原案通りの成立を要望する3団体関係者と、修正を要望する草の根的な臨床心理士たちとが、それぞれに別々にロビー活動を行ったため、国会議員がその調整を行うことが必要になった。
 この極めて困難な調整に時間がかかり、公認心理師法案は、2014年6月の第186回通常国会に提出されてから、第187回臨時国会で継続審議の予定が衆議院解散による廃案で先行きが危ぶまれた。しかし、年が変わって第189回通常国会で再提出され、会期の大幅延長もあって、ようやく2015年9月9日に参議院本会議にて全会一致で可決成立、同9月16日に公布された。
 法案は、第42条について修正はなかったものの、医師の指示を含め具体的な運用は政省令で定める旨の追加条文が第45条第2項にあり、また、付帯決議においては、臨床心理士に一定の配慮をすることが明記された。公認心理師法とその付帯決議は、認定協会や臨大協等の臨床心理士の主張と7者懇等の精神医療団体の主張の双方から、現時点において可能な限りの内容を取り入れたものと考えることができる。

7.そして、これから
 紙幅も尽きたが少しだけ展望を書いておきたい。心理職の国家資格化は、以上のように、臨床心理学を基盤とした学術基盤型の国家資格と、精神保健領域に限定し医療制度に組み込むための領域基盤型の国家資格という、全く異なる考え方の間でどちらにも進めず数十年が経過した。公認心理師は、その異なる構想の両方を取り入れており、それゆえに、どちらにどう進むかわからない、姿のはっきりしない面を持っている。すなわち、「医療や医師との関係」が整理された結果としてできた資格ではなく、公認心理師という器の上で、これからその明確化が始まるものと考えられる。
公認心理師が誕生したことで、冒頭の高橋課長補佐の発言にあった「そもそも、我が国の精神医療やカウンセリング事業の体制はどうあるべきか、国民にとって、何が望ましいのか」という課題に対して、国家資格化に注がれていたエネルギーをようやく向けることができるようになった。2014年には改正精神保健福祉法が施行された。20年前には見えていなかった多様なニーズが目の前に広がっている。公認心理師は、医療、教育、産業、福祉等の領域ごとの課題に十分に応えることができると同時に、それらに共通する学術的基盤を持つ必要がある。すべての領域を包括する資格であることを強みにできる方法が模索されなくてはならないと思う。
 最後に、公認心理師法成立まで、それぞれの立場でご尽力いただいた方々、とりわけ難しい調整を引き受けていただいた国会議員の先生方に、この場を借りて心より感謝申し上げます。

(注)本稿の執筆にあたり、日本臨床心理士会雑誌、心理臨床学研究、臨床心理士報、日精協誌の関連各号および、関連諸団体のホームページに公開されている資料及び以下の文献を参照・引用した。
大塚義孝編『臨床心理学原論』(誠信書房、2004)
全心協『「全国保健・医療・福祉心理職能協会」シンポジウム記録集』(1995)
丸山和昭『カウンセリングを巡る専門職システムの形成過程―「心」の管轄権とプロフェッショナリズムの多元性』(大学教育出版、2012)

2017年2月27日 (月)

公認心理師カリキュラム等検討会ワーキングチームにおける第7条第2号ルート(実務経験)についての議論

公認心理師法第7条第2号ルートに関する検討会ワーキングチームの討論の流れ(要約)
<第2回WT>
(1)関係団体・有識者からのヒアリング
●奥村氏(3団体):(3団体それぞれからの要望でありとりまとめはなし。)
・臨床心理職国家資格推進連絡協議会「学部卒者の実務経験は指導者がいる。政令等でも定められた期間で5年以上とする。」
・医療心理師国家資格制度推進協議会「第 2 条の内容を実習指導者講習会修了者の指導の下、あらかじめ認定されたプログラムに沿って 2 年以上、2,500 時間以上、これを実務経験とする」
・日本心理学諸学会連合「学部卒者の実務経験は 5 年とし、勤務時間数、実務経験の対象となる施設・事業、職種内容を規定すること」
●丹野氏(日本学術会議心理学・教育学委員会分科会):学部では「知識」を学び、大学院あるいは実務経験では「技能」を身につける。(実務経験の期間についてはヒアリングでは言及がなかったが後の議論で「5年は長すぎる」との発言あり。)
●増田氏(臨床心理分野専門職大学院協議会):医療・保健・福祉等々で 5 年以上の実務経験(心理療法、心理査定、コンサルテーションなど)。認定された施設において、実務指導者からの指導、個別指導、心理研修センター等での一定のプログラムを含む経験。
●大野氏(日本臨床心理士資格認定協会):5年以上。最低3分野の質が保証された研修を受ける。事例を担当する場合にはスーパーヴィジョンを受ける。
●川畑氏(日本臨床心理士養成大学院協議会): 第7条第2号の受験資格は・・・
・第1号と同等以上の知識・経験を有することを証明できる者に与える。
・①職場において大学院と同等とみなせる教育プログラムが用意され、それを受けること、②スーパーヴィジョンを受けながら継続的な相談面接を、3ケース以上、45セッション以上経験すること、③医療領域を含む3領域以上での実習経験を持つこと、④修士論文に相当するレポートを提出すること。
・受験時に、上記を証明するための審査を試験実施機関によって受けること。
・上記の条件を鑑みると、受験資格は5年以上の実務期間を経て与えるのが望ましい。
(2)討論
座長より、「5年以上」という意見が多いとのまとめ。
→「2年」で十分という意見。(中島構成員代理岡本氏、宮脇構成員)
・学部卒でも院卒でも使いものになると思えるのに現場で2年かかる。経験則。
・実務経験2年で大学院と同じ内容のことが可能。これまでの非常に効果をあげている。
・「無資格で使えない人」をどういうふうに5年間雇用するか問題。(雇用の側から)
・無資格で非常に低い賃金体系で5年間我慢するのは過酷。
・経済的理由。機会均等。平等性の確保。
・2年というだけでなく、2年以上かつ2000時間以上あるいは2500時間以上にしてはどうか。(引用者注・「何が」2000時間以上なのか明示されていないが、前後の文脈から「実務経験時間」とはほぼ勤務時間のことを想定しているようだ。)
→2号ルートへの危惧(座長)
・1号ルートがメインなのに2号ルートに流れるなどの副作用も考えられる。
・年数で決めると常勤でも週2,3日の勤務でも同じ経験にカウントされるのは問題。
→内容の確保についての意見(川畑構成員、沢宮構成員)
・1号ルートと同等の基準をどう確保するかが大切。
・学部で学んだだけで汎用性のある資格にするのは難しい。

(第3回WTは実務経験についての議論はなし。)

<第4回WT>
「公認心理師カリキュラム等について(検討に当たってのたたき台 その2)」の中で、第2回WTの議論を踏まえて実務経験の施設と期間についてのたたき台が提示される。(資料3のスライド3~7)
・施設については、大学院において実習を実施する施設を参考としてはどうか。
・複数の分野の施設で実務を経験すべきかどうか。
・期間をどう規定するか。
→施設について
・資格がないのに常勤として勤められるのは医療・福祉の一部ではないか。(宮脇構成員)
・5年以上経験や講習会を受けているような指導者のいる施設。(宮脇構成員)
・指導者がいて教育のプログラムを持っている施設に限ってはどうか。(中嶋構成員)
・医療・福祉以外でも大卒が就職している領域があるので狭めすぎないほうが良い。(川畑構成員、奥村構成員)
→期間について
・単に2年ではなく、常勤で2500時間以上、指導者のいる施設。5年にしてしまうと大卒に機会を与えようという法律が生きてこない。(宮脇構成員)
・2年にすると、2号ルートに流れる危惧がある。(座長)
・汎用性の資格として知識やスキルを実務経験でどう確保するのか。(増田構成員)
・汎用性については実務の中の「連携」の経験で学べる。(中嶋構成員)
・知識を実践に結びつけるブリッジの機能が大学院。2号を1号と同等にするためにはそこをどう学ぶか。働きながら大学院での研修日を設けるなどの工夫を。(吉川構成員)
・大学院の座学と同等のものをどう担保するか。実務を行う施設で、講義形式や振り返り等の教育研修の機会を設ける。あるいは、働きながら部分的に大学院等で学ぶ。(座長、川畑構成員)
・大学院がメインルートで質保証をしていくことが基本。(沢宮構成員)
→ここで座長より、「悪知恵が働く人のルートを塞ぎたい」との話の後「私個人で厚生省とも文科省とも相談していませんが、根拠はありませんが、3 年ぐらいでいいかなと。ただし、座学部分を科目履修か何らかでしっかりと補うこと、それからお話があった他分野の経験をプログラム上で担保するということで、いかがなものかと。」と提案される。すなわち、指導者の要件も含めてプログラム評価をし、勤務する領域以外の経験をどのようにかして取り入れ、座学は夜間大学院等で補うことで、合計3年間との案。それの案について、さらにいくつかの疑問と応答がなされた。

<第5回WT>
第4回WTの議論を踏まえた新たな「実務経験について(たたき台)」(資料5)が提示される。
〇実務を経験する期間は3年を目安としてはどうか。
〇複数分野での実務を積むことができるよう、主たる勤務施設にといて、指導者が経験すべき実務の内容について基準を定めたプログラムを作成することとしてはどうか。
・・・とした上で、1.プログラムを認定する仕組み、2.プログラムに必要な内容、3.医療機関以外に就職した場合のプログラム、4.期間の換算方法、4点の議論が整理されている。
・漫然と3年勤めたということで実務経験にするのではなく、プログラムがあって到達目標などが定まっており、そのプログラムが評価されていること。医療機関以外で可能かどうか。(座長)
・公務員や法務技官、家庭裁判所調査官などでプログラム可能ではないか。(吉川構成員)
・福祉領域で公務員の場合、現実に他の領域に研修に出たりすることは困難では。(増沢構成員代理中垣氏)
・2号ルートでの5領域の経験は、連携などを通してで良いのでは。(宮脇構成員)
・1号ルートがメインであるとするなら、2号ルートについては、医療以外でもプログラムが可能かどうかをここで議論するよりも、実際にプログラムをやりたいという施設が医療以外でも出てくればその時検討するので良いはず。(川畑構成員)
・2号ルートにも座学は必要。(川畑構成員、増田構成員)
・座学について心理研修センターが講習をする、あるいは、大学院が講座を設けるなどの方法が可能では。(黒木構成員)
(議論は以上で、実務経験の期間については「3年」を前提として話が進んでいた。)

2016年12月31日 (土)

みなさま良いお年を

ブログの更新をしないまま気づいたら1年過ぎていました。

今年は、個人的にはいくつか新しいことに挑戦をした1年でした。十分にできたわけではありませんが、今年の小さい結果を踏まえて、少しずつ現場から若手の育成に関与できたらと思っています。

公認心理師は来年の施行に向けて現在急ピッチで内容の検討が行われているところです。(公認心理師カリキュラム等検討会およびワーキングチーム

私は、検討会の第1回とワーキングチームの第2回・第3回を傍聴しました。その中で、「心理学」と「臨床心理学」の関係が言及される場面がありました。検討会の北村座長をはじめ、医学や福祉学など他の領域から見ると、「心理学」と「臨床心理学」の関係は決してわかりやすいものではないでしょう。

公認心理師は法第2条にある通り、心理的支援を必要とする人々について、アセスメントを行い、相談や助言、あるいは予防的アプローチなどの心理的支援を行っていく専門職の資格です。それは「臨床心理学」が主に探求してきた分野ですが、臨床心理学以外の心理学の知見ももちろん役に立つ場合があります。

私は大学人ではないので現状を中から見ることができませんが、臨床心理士の資格を作る準備が進められていた約30年前に比べると、「心理学」と「臨床心理学」の垣根は低くなってきたのではないでしょうか。

ひとつには、その30年間に脳神経科学の発展がありました。そして認知行動療法の進化に伴ってエビデンスの探求がありました。同時に、精神分析・力動的心理療法の分野でもアタッチメント研究や関係精神分析など現代的なアプローチの発展があり、エビデンスの研究も進んでいます。心理療法は脳神経科学や発達心理学の成果を取り入れて発展しているということです。

また、多職種や地域連携によるチームアプローチも現在では当たり前のことになりつつあります。臨床心理士にとってスクールカウンセラーの広がりは、地域におけるチームアプローチの重要な体験になりました。

これらの個々の経験を集めて、ひとつの学問分野としての発展が可能な形にしている「入れ物」が臨床心理学であり、神経心理学や発達心理学の知見も臨床心理学の中に取り入れて発展していくという理想形を思い描くことができます。
いっぽうで、発達心理学や社会心理学やその他の基礎的な心理学を学んだ人たちが、臨床心理学について専門的なトレーニングを経ないで、現場で相談業務を行っているという歴史もあったと思います。これらのひとつは、発達心理学出身の人たちが発達相談を行う、教育心理学出身の人たちが教育相談を行うといった、領域を限定した形で発展してきたもので、そこにはその領域内の相談業務についての方法論的な蓄積も十分にあるようです。

また、医療領域には、臨床心理士資格が普及する以前に、基礎的な心理学を学んで心理職として働いている世代がありますが、近年は臨床心理士の資格を持った人が雇用されることが多いかもしれません。

ずっとこのブログに書いて来たことですが、公認心理師は、臨床心理学という学問分野をベースにした専門的養成を目指しているグループと、発達心理学やその他の基礎的な心理学を基礎にして相談業務を行ってきたグループとが一緒になって作った資格で、言わばひとつの資格の中に木と竹が混在している側面があります。

木と竹が混在している資格を作ったら、いつの間にか一面が竹林になるのではという不安が、公認心理師を作る過程で関係者から出ていました。「臨床心理学」がなくなってしまうという不安です。しかし、支援を必要とする人々の立場から考えれば、今必要とされている支援がどれも消し去られることなく継続され、かつ良いものに生まれ変わっていくことが望ましいことは異論のないところでしょう。

学問というのは何かを明らかにすると同時に何かを見えなくしてしまうものでもあります。たとえば、公認心理師について今年いくつかの特集雑誌が発行されましたが、そこには「チーム医療」が「新しい」こととして書かれていたりします。
私が医療・保健領域で仕事を始めた25年前に心理職を含むチームアプローチはすでに全国に広くあったものなので、それが「新しい」と言われることに違和感があるのですが、「見えないものはないことにされる」という学問的専門的アプローチそのものの持っている弱点をそこに見る思いがします。(注)

もう一つ例をあげると、この30年間さかんに行われているトラウマへのアプローチは、実は19世紀の終わりから20世紀の初めにに精神分析が取り上げ、かついったん視野の外に置いたものです。トラウマへのアプローチが「新しい」ことなのではなく、アプローチしていた人たちはあったけれども、事情があって前面に出てきていなかったということですね。学問というのは、いつもこのような「学問の事情」を抱えているように思います。

公認心理師も、さまざまな「学問の事情」を抱えて、とりあえずの第1段階を進んでいるところです。日本の「臨床心理学」は「心的現実」を重視する内面からのアプローチに力点を置いてきた歴史的な経緯があります。それに対して、現実的、客観的なアプローチが大切だという主張も、特に公認心理師が作られる過程であちこちで言われていました。

私が思うのは、「心的現実」と「客観的現実」の間に分野としての壁を作っているのは、「学問の事情」であって「現場の要請」ではないということです。現場はいつもトータルなものです。
公認心理師の検討会およびワーキングチームを傍聴し、この資格を現場にトータルに役立つ資格にしたいという座長および委員の意気込みが感じられることはたいへん嬉しいことだと思っています。しかし、安心もできないと思っています。

公認心理師によって狭められてしまう視野について自覚し、すでにあるにも関わらず「ないもの」にされてしまうものがもしあればそのことを発言していくことが、来年はさらに必要になるかもしれません。
みなさま、良いお年を。

(注)実際に現場では必要なことをそれをできる人ができるだけ行うということが生じるので、学問的に言葉にされていないことも、現場ではたくさん行われていると思うので。

«今年も1年間ありがとうございました

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