国家資格化のこと②
2005年に議員連盟の合同総会で承認された「臨床心理士及び医療心理師法案(全心協ホームページより)」が、なかなか上程されないまま2年近く経っています。事態が進展しないのは、精神科医療医学諸団体(精神科七者懇談会)の反対のためとされています。
この反対は、2005年に起きたさまざまなできごとの不明確さに対する反発を含んでいる部分もあるかもしれませんが、単に手続きだけのことで約2年にもわたって、このように大事な課題が進展できないということはないでしょう。
長年このことに関わって来ている関係者は、ともすると手続き的なことに目が向きがちなようには思いますが、大切なことは、やはり中身なのだと思います。
- 心理査定・心理療法は、治療行為であって、医学的知識経験をもとに医師の指示の下で行われるのでなければ人体に危険を及ぼす行為、すなわち医行為に含まれるものなのではないか
- 医療保健(及び福祉)領域は、医師及び関連職種が、体系だった法律のもとに医行為を行っている場であるので、医療保健(及び福祉)領域で働く心理職には、法体系に即して場を限定した国家資格が必要なのではないか
- 医療保健福祉領域は、上記の医療法体系との関係および健康保険との関係で国家資格が必要になるが、その他の領域には国家資格は必要ないのではないか(国家資格なしに自由にやればいいのではないか、その他の領域を国家資格化するのは、規制緩和の時代にあっては「もったいない」ことである)
- 養成は、学部4年間で最低限のカリキュラムを履修すれば、あとは現場で経験を積んでいくことで十分なのではないか(必要ならば大学院に行く人がいてもよい)
- カリキュラムの中に、医学科目がきちんと入ることが必要
- できる限り早期に国家資格化し、医療保健福祉のユーザーに、安心して健康保険および各種公的扶助を使ったサービスが提供できるようにしたい
- 国家資格化すれば、医療保健福祉機関に、より多くの心理専門職が雇われるチャンスが広がり、国民にサービスを提供しやすくなる
ということを、従来、医療心理師推進の諸団体は主張して来ました。上記の法案への反対意見が根強いのは、基本的には、医療心理師推進側が、この従来の主張を踏襲しているからだと思われます。つまり、医療心理師推進諸団体の従来の主張からすると、上記法案の「臨床心理士」部分の内容には疑問が多いということになってしまうのです。
いっぽうで、心理専門職・臨床心理職当事者には、認定臨床心理士の有資格者が多く、その数は1万5千人を超えました。医療には、全体で少なくとも4~5千人程度は心理職が存在するだろうと言われており、そのうち認定臨床心理士の有資格者は3千人は超えるだろうと言われています。全心協の会員は、600人弱だと言われています。
これらの人数が何を意味するのかは、一概に言うことはできないと思っています。それぞれの置かれている立場と、それぞれの主張・意見が必ずしも一致しているとは言えないでしょう。また、多くの、特に若手の心理専門職・臨床心理職の中には、全くこの問題について、どう考えていいのかわからないという方々も、まだまだ多いのではないかと思います。
いろいろな意見はあると思うのですが、上にあげたような論点についての議論を深めて、ある程度の「日本の心理専門職・臨床心理職全体としてはこう考えていきます」という一致点を見出す必要はあると思います。
人数で言うと、どうやら、上記の医療側の主張にコミットしている心理専門職・臨床心理職当事者は少ないようです。しかし、精神科医療医学関連諸団体という実績と伝統を持つ大きな団体が、医療側の主張に賛成されているようなのです。
みなさん、どうしていったらいいと思われますか。
これはやはり、どこにどんなサービスを必要としている国民が存在するか、私たちが、どこでどんなサービスを提供しようとしているかという基本の課題なのだと思います。
今もなお、医療側の人たちには、非医療のサービスの必要性が十分見えているとは言えません。大学院による養成が必要と言われていることの真意も十分には伝わっていません。医療の外にどんなニーズがあるのか、そこで心理職はどういう働きを必要とされているのか、なぜ大学に加えて大学院修士課程以上学び続ける必要があるのか、自明のこととせず、発言していくことが必要だと思います。
私個人は、医療側の人たちにそれを伝える努力を続けていますが、個人の力が大変弱いことも痛感しています。

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