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2014年6月 5日 (木)

公認心理師法案の上程に向けて

「公認心理師法案」は自民党の党内審議を終えて、現在、第186回国会に上程すべく、各党内での審査が続いている。超党派の議員立法なので、国会に上程されれば即成立とも言われている。(法案要綱骨子案やその他の流れは、日本臨床心理士会のホームページ「国家資格関連情報」をクリック、電子版速報NO.1516をご参照ください。)

この法案要綱骨子案は、418日に三団体と日本臨床心理士会(以下、臨士会と略)に提示された。そこで明らかになったことは、「医師の指示」が三団体の要望や七者懇の提言とは異なり、医療提供施設(あるいは医療分野)に限定されていないということだった。法案作成作業は担当の国会議員と省庁によって行われるため、途中段階は当事者にも知らされない。この時点で会期は残り2か月。そのわずかな時間の中で、医療外の領域に医師の指示が及ぶ形のこの法案について、心理職側の対応が試されることになった。

さっそく臨士会は、421日に議連関係の各議員および担当省庁へ要望書を提出。それは奇しくも日本心理臨床学会(以下、学会と略)理事選挙の開票日でもあった。422日、自民党議連総会で法案要綱骨子はそのまま承認された。法案は今国会上程へのステップを1段上がった。

厚労省からは、この法案の心理的支援とは医行為や診療の補助ではないなどの補足説明があったそうだ(上記速報NO.15p.5参照)。医療でも医療外でも同じ心理的支援を行うならば、医師の指示を場では限定できないというのが理由であるとの風聞もあったが、何がどうしてこうなったのかは、はっきりしなかった。

医行為でないならば、ST法やPSW法に照らして医師の指導で良いのではないか。私は、個人的にツイッター上で「今、指示ではなく連携か指導にと臨床心理士が一丸となって要望することがとても大切な状況です。…法案を止めるためではなく、作るためです。」(428日)との呼びかけもした。

医師の指示について、指導への変更か、少なくとも領域を医療に限定してほしいと考える臨床心理士・心理職は多く、変更を要望する声はあちこちで上がって行った。これは、国家資格問題に関する意見の相違でうまくまとまらない臨床心理士内部が連帯を取り戻すチャンスにも思えた。法律ができれば、その運用のためにさらにさまざまな要望を継続していく必要がある。そのためには、臨床心理士内部がまとまっていることが強みとなるだろう。私たちはこのチャンスを生かせるだろうか。

私は、この法案要綱骨子案の医師の指示の部分を見て、次のようなことを考えた。

・この法案は汎用性とは言うものの、医療心理師に近い性質を持っているのではないか。

・医療保健福祉領域はひとまずこれで良くても、それ以外の領域ではいろいろな問題が生じるのではないか。

・汎用性とは言え、国家資格を作るとなると、日本的な医療制度のルールが他の領域にまで及ぶことになってしまうようだ。それならいっそ、領域を分けて資格を二つ作ったほうが良いのではないか。

・大事なところで想定外のできごとが起きたが、カリキュラムや受験資格などはどうなっていくのだろうか。

・自由に独立して専門性を生かすなら、国家資格でないほうがいいのではないか。でも、それだと医療はどうなる?

など。

そして何よりも、『私たち推進担当者の力不足でこのような事態を招いてしまった。めちゃくちゃ申し訳ない。』『もっと知恵と力のある人たちが担当したら、2資格1法案で実現?いや、<臨床心理士を国家資格に>が実現したかもしれないんだろうか??』というような、自責的な考えが湧いた。

さて、昨年の初夏の頃から、心理の国家資格問題に新規参入した「臨床心理士の職業的専門性と資格を考える有志の会」は、民主主義的な議論を要望して短期間に精力的に活動し、この問題に関心の低かった人たちにも注目されるようになった。私も、有志の会関係の会に、個人の立場でスピーカーをさせていただいたりした。

私は、有志の会が掲げる民主主義的な議論の大切さには全面的に賛成する。そして、国家資格問題において、関連するどの団体も、情報の透明性や、議論の機会の平等性などにおいて、非常に不十分かもしれないと思う。個人的には、その中でも臨士会や学会が特にひどいということは言えないように思うが、その人のいる立場によっては、臨士会はかえって遠くに見えたりするかもしれない。また、各団体の上に、複数の連合体が複雑に重なり合いながら存在し、各団体の役員も重複しており、資格の動きは万華鏡のように見え隠れする構造になっている。これも、もっとシンプルなわかりやすいものにできないかと、ずっと思って来た。

また、このようなギクシャクした状況の中で、力で押すように前進するよりも、いったん止まって冷静になり、何が起きているのかを共有できたほうが良いのではとも思う。しかし、いったん止まったとしても、国家資格を作るなら、この国では大枠はこの形しかないようにも見える(その理由については今回は詳述しない)。この公認心理師か現状維持(維持というか徐々に沈下かもしれないが)かの二者選択なら、どちらが良いのだろう。

臨士会は428日に医師の指示に関する要望書の第2弾を提出。いくつかの都道府県臨床心理士会や有志の会からも要望や意見が出された。臨床心理士内部が医師の指示のことで騒然としている間、議員と担当省庁は、法案本文の作成に多くの時間を割いておられたと聞く。511日、臨士会理事会は骨子案を基本的に支持しさらに要望することを議決。その一週間後、学会の社員総会があり、新しい役員が選ばれた。学会は任期に上限があり、今回は、どうしても理事長は交替だった。

医師の指示について指導に変更するか少なくとも医療領域に限定していただきたいという要望は、臨床心理士・心理職全体で一致しているようだ。しかし、基本的に今国会での法案上程を目指すか、要望が通らなければ止めようとするのかについては、臨床心理士内部で一致していないように見える。つまり、法案を推進しつつ医師の指示問題についてはその動きの中で可能な変更、あるいは政省令や通知に基づく適切な運用を要望していこうという立場と、医療外の医師の指示が変更されない限り、公認心理師の上程は止めるべきだという立場、少なくともおおまかに二つの異なる立場が、やはり臨床心理士の内部に存在している。そのことが、518日の学会の社員総会以降に顕在化して来たと思う。

臨士会からも学会からも情報が公開されていないが、ツイッター上で有志の会から流れている情報により、学会の社員総会で医師の指示を医療領域に限定する要望が何らかの形で票決されたことがわかる。有志の会は、その票決に基づく学会の要望書が未だ議員や関係省庁に届いていないとして、学会新理事長を批判している。臨士会や学会が医療外の医師の指示の変更を要望しているのは内輪をなだめるポーズではないかと。学会の事情については情報の公開を待ちたいが、容易に想像されるのは、新理事長は法案の上程を優先するために要望のタイミングを計っているのではないかということである。

医師の指示についての要望ということで、一見ひとつの目標を持てそうに見えた臨床心理士の内部が、結局のところ、大雑把に言えば、今回ぜひとも作りたい派と、止めたい派とに分かれてしまっているようだ。そして、残念だがしかたのないこととして、おそらくは止めたい派の方々だろうと思われる仲間が、作りたい派の学会・臨士会役員の動きとは別に、議員や省庁への陳情活動を行うという流れになった。

作りたい派は止めたい派の怒りを理解していないわけではなく、止めたい派は作りたい派の痛みを理解していないわけではない。そういう意味では、私たちはひとつだ。しかし、1990年以来、この国家資格問題に関しては、どうしても臨床心理士・心理職の内部に一種の分裂が生じてしまう。やはり、汎用性ということそのものに無理があるのだろうか。

止めたい理由はいろいろ語られている、この「医療外の医師の指示」あるいは「医師の指示」そのものにはじまり、「臨床心理士の実績を損ねる」「臨床心理士が生き残れないのでは」「指定大学院がつぶれるのでは」「諸外国に比べて低い学歴では専門性が担保されない」など。では、今回ぜひとも作りたい仲間の理由は何だろう。

私の推測では、今回ぜひとも作りたいと思っているのは、長い年月この問題に関わって来られた幹部の方々で、その方々は、国家資格がこんなに近くまで来たことが未だかつてないこと、そして今回は、臨床心理士の中にも、臨床心理士以外の心理職の中にも、医療団体にも、そして何より議員や省庁にも、「ぜひとも作ろう」という意欲を持った担当者がそろっているという理由から、今しかないと感じておられるのではないだろうか。止めたい派の先生方が「そんな理由で作ろうと思うのか、アホめ!」などと罵倒されるのが聞こえて来るように思うが、作りたい派からすれば、作るための人材がこれだけ役員に名を連ねられるのは、惑星直列のような稀なチャンスだと見えているのだろうと思う。

少しだけ擁護しておくと、作りたい派の役員がただ作ることだけを考えているというのではなく、作る中で、医療外の医師の指示やカリキュラム、経過措置、試験機関などの課題をどうするか、これまた叱られる水面下の準備を続けていることは記しておきたい。もちろん、さまざまな怒りやお叱りが作ることの担当者(作る人)に向けられていることは、受け止めなければならず、お前らもう信用できひんわと言われれば言葉もないとしか言いようがない。

さて、作りたい派はそのような様子だが、では、私は、どちらを選んだら良いだろう。正直に言って、立ち止まってもっと良い資格をもっと良いやり方で作れるのなら、そして、今は全く程遠くても、臨床心理士の世界が成熟し、今度こそまとまって国家資格を作ろうとできるのなら、今は立ち止まった方が良いのではと、何度も何度も考えた。作る派にも止まる派にも正当な理由はあり、どちらも選びたいという気持ちで、どちらも選べなくなってしまう。

みんな、今、そういう苦しい選択を迫られているのではないか。

そして、自分自身の選択は、自分の利益のためであっていいのではないか。指定大学院の先生方は大学院の存続を考えるだろうし、開業の先生方は自由独立と報酬の維持向上についても考えるだろう。医療の方々は診療報酬の点数を得たいし配置基準もほしい。などなど。

全部が成り立つといいなあ。でもそれはどう考えても無理。それを望みすぎるとすべてを失うのだろうか。

(ここからはですます調にしよう・・・)

私は、特にこの1年間、平井先生はじめ有志の会のみなさん、特に若手のみなさん、そして、長年のネット仲間のみなさんなど、多くの方々とオンラインでもオフラインでも話ができて、本当に良い経験ができたと思っています。その感謝ははかりしれません。そして、私の考え方感じ方が、特にこの1か月余はとても揺れたので、それに振り回された人にはごめんなさいと言いたいと思います。

信じてはもらえないかもしれませんが、私には、自分が資格を作りたいというような欲望はなくて、自分にそんな政治的社会的力量がないのもよくわかっています。でも、何が起きているのかが知りたかった。そして、20年間、おそらくかなり近いところで、心理の国家資格の生みの苦しみを目撃し続けて来ました。知りたい欲望は満たされたので、これ以上この件について何かを知りたいとはもう思っていません。

では、公認心理師法案について今国会への上程を目指す動きに協力するかどうかの決断ですが、私は自分自身の利益と欲望から、やはり作るほうを目指したいと思います。私の利益と欲望は、それでも国家資格ができた方が、今はまだ心理職が配置されていない場所に心理職を配置することができる可能性は高くなる、そして、経済的に恵まれず、病み疲れ、見放されたと感じ、行場もなく、逃れがたい痛みと共に生きている、もっとも弱い立場の人たちと、「私が」出会いやすくなるだろうというものです。どちらかを選ばないといけないなら、惑星直列のこの機会に、そして理想の資格まであと百年のこの機会に、作る方への協力、すなわち作りながら良い法案にしていくことを信じる方を選ぼうと思います。(百年はすぐ過ぎるかもしれませんが。)

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コメント

imai さん

私も、ブログに書きました。
国家資格・公認心理師(4)今国会での公認心理師法の上程を望みます
http://traumaticstress.cocolog-nifty.com/test1/2014/06/post-d5a0.html

つなでさん

はじめまして。地方の若輩CPです。
SC、非精神科病院でのリエゾンを経て、現在精神科クリニックに勤務しております。
これまで仕事をしていく中で、国家資格でないこと、診療報酬がつかないことで、肩身の狭さやプレッシャーを感じることが多々ありました。疲れている時などには、そのように感じる自分が未熟なのではないかと、妙な劣等感や罪悪感を感じることもありました。

もちろん、そのような肩身の狭い身分だからこそ、職場で役に立つ人材にならなければならない、専門性を高めなければならない、「CPがいて助かった」と思ってもらえるように頑張らなければならない…と足掻き、その分、何かしら力がついたような気もしています。

それでも、やはり国家資格になればどんなにいいだろう、と思わずにはいられませんでした。その理由は、各所で切れ味鋭く語ってくださる先生方がたくさんいらっしゃるので、敢えて述べませんが…。

某所のツイッタ―で成り行きを見させていただいて、推進派も反対派も、代表の方々はとても大変な、消耗する闘いをされているなと、そして、特に推進派の方々の大変な努力と傷つきを感じ、何もできない身ですが、せめてエールだけでも送りたいと思い、勇気を出してこちらにコメントさせていただいた次第です。

今後どういう方向に推移しようとも、これまでのご尽力、国家資格化を望むCPの端くれとして、感謝の念に堪えません。

>ぺざんとさん コメントたいへんありがとうございます。読ませていただいて、足元の悪い難儀な道の途中で、清らかな湧き水をいただいたような、すがすがしい感じがしました。いろいろとご心配をおかけしているとは思いますが、国家資格の入り口まで辿りつけたことは、本当にみなさまのおかげと思っております。この国で、心理の仕事が、もっともっと身近で、安定した基盤を持つものになるよう、みんなで力を合わせてやっていきましょう。

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